「アプリとネットワークの橋渡しを」とF5ネットワークス

F5ネットワークスは6月24日、アプリケーションアクセラレーション市場に関する説明会を開催。ただ帯域やサーバを増強するだけではWebアプリケーションのパフォーマンス改善は望めないとした。

» 2005年06月27日 22時43分 公開
[高橋睦美,ITmedia]

 ブロードバンドの普及、バックボーンの帯域強化……ここ数年で、われわれが利用できる帯域は考えられないほど増加した。しかし帯域を増加させるだけでは、企業での利用が広がるWebアプリケーションのレスポンスの遅さにいらいらする状況は改善されないとF5ネットワークスは指摘する。

 「いくら網がギガビットクラスになろうと、アクセス回線が100Mbpsになろうと、TCPを使う限りWebアプリケーションのパフォーマンスは遅いまま」(同社プロダクトマーケティングマネージャ、武堂貴宏氏)。

 武堂氏によると、Webアプリケーションのパフォーマンス上のボトルネックはWAN側とLAN側にそれぞれ1つずつあるという。WAN側では、確認応答やフロー制御、輻輳制御といった、信頼性確保のためのさまざまな仕組みを備えたTCPの構造上、オーバヘッドが生じてしまう。「いくら帯域を広げても、その中を通る水のスピード、すなわちスループットは変わらない」(同氏)。

 一方LAN側では、Webアプリケーションサーバへの負荷が課題になっている。Webアプリケーションの場合、伝統的なクライアント/サーバ型アプリケーションに比べ、ただでさえ多くのコネクションが張られる。そのうえ、コネクション処理や暗号化などの「雑用」に忙殺され、「本来のアプリケーション処理に割けるのは、リソースの3分の1程度」(武堂氏)。

 武堂氏は、こういったボトルネックの原因を理解せずにただ帯域やサーバインフラを増強しても、根本的な解決にはつながらないと述べた上で、F5が提供するアプリケーションアクセラレーション(高速化)技術の優位性を強調した。

 同社の主力製品である「BIG-IP v9」では、SSLアクセラレーションや負荷分散、HTTP圧縮に加え、メモリベースでキャッシュを行う「Fast Cache」、TCP高速化のために定められたいくつかのRFCをサポートしてTCPの最適化を行う「TCP Express」といった機能を提供する。「こうした各要素を部分的に提供するベンダーならばほかにもあるが、トータルで提供できるのはF5だけ」(武堂氏)。Webアプリケーションの拡大にともない需要の高まりが予測されるアプリケーションアクセラレーションの市場において、リーダーの位置を確保したいとした。

 現に、国内のある製造業が、ERP系アプリケーションの高速化を目的にBIG-IPを導入しているという。この企業では、海外の工場との間をインターネットVPNで接続し、その上でWebアプリケーションを稼動させているということだ。また、最近ではセキュリティの観点からも注目が高まっているシンクライアントシステム/ブレードPCとの組み合わせで使われるケースもあるということだ。

 F5ネットワークスでは今後、OracleやSiebel、SAPやPeoplesoftといったアプリケーションベンダーとの協力を密にしていくとともに、システムインテグレータに対し「アプリケーションアクセラレーション」の必要性をアピールしていく方針という。同時に、MAPIやCIFSなど、特定のアプリケーションに特化した製品を提供することも検討していく。

 ネットワークがコモディティ化した今、レイヤ2〜4だけに専念していてはやっていけないとF5ネットワークス。アプリケーション・アウェア・ネットワークというコンセプトに基づき「ネットワークとアプリケーションの橋渡しをしていきたい」(同社代表取締役社長のティム・グッドウィン氏)とした。

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