オープンソースもネクタイを締めなければ

オープンソースがビジネスアプリケーション領域に進出しつつある。導入する企業もコミュニティーも、互いに成長することが求められている。(IDG)

» 2005年07月06日 13時43分 公開
[IDG Japan]
IDG

 先日、「Sustaining Open Source Benefits」(オープンソースの恩恵を維持する)と題するウェブキャストの司会をした。AppleのMac OS XチームでDarwinプロダクトマネジャーを務め、オープンソース、UNIXマーケティング、Xgridに責任を持つアーネスト・プラバカー氏と、振興ITサービス企業Appergyの社長兼最高リサーチ責任者、ピーター・バリス氏に話を聞いた。

 興味深いディスカッションだった。選択肢の拡大が続く中で、オープンソースの利点を保つ方法を探るという内容だ。言い換えると次のようになる。Network World誌のオープンソース特集でもさんざん指摘されているように、オープンソースの守備領域は、システムレベルから本格的ビジネスクリティカルアプリケーションへと広がりつつあるが、標準、統合、管理にまつわる諸問題は、その採用の規模と方法に大きく左右される。

 企業は、出費に十分見合った素晴らしい価値が得られる可能性と、IT部門によるオープンソースの採用・利用方法に含まれるリスクとのトレードオフに直面する。オープンソースシステムを採用する者は、「悪い」オープンソースの作法を退け、「良い」オープンソースの作法を積極的に促進する習慣を身に付ける必要がある。

 アプリケーションレベルのオープンソースソフトの世界で目にする悪い作法の1つに、標準、統合問題に対する軽視がある。一方、良い作法としては、公開開発プロセスへの関与とその継続が挙げられる。オープンソースのアプリケーションを採用した企業は、そのコードの進化とオープンソースコミュニティー全体に貢献していくべきだ。それはつまり、共通目標を認識するということ。企業は、オープンソースアプリケーションが提供する機会を認識し、それに従って行動し、より大きな展望に取り組んでいかなければならない。そのために投じた時間と労力は、最終的には、もらうだけで貢献しない姿勢を取った場合より、はるかに大きな成果として返ってくる。

 企業のIT部門からオープンソースコミュニティーに対しては、この要求への歩み寄りが求められている。プラバカー氏がウェブキャストで指摘したように、「オープンソースは、友人とオールナイトパーティーを楽しんでいるだけではいけないことに突然気付き始めた。朝起きたらネクタイを締めなければならないのだ」。

 プラバカー氏はまた、企業IT部門には責任があると指摘した。オープンソースソフトを使うためには、企業は「解決しようとしているビジネス上の問題と、その中でもどの部分が最も重要なのか」を理解しなければならないという。

 わたしが卓見だと思った指摘は、オープンソースの恩恵を維持していくにはオープンソースの思想全体が成熟する必要があり、一方で企業も、自社で使うソフトについての考え方を成熟させる必要がある、というものだ。

 では、今日の企業IT部門のソフトに対する考え方が未熟だということを、どう説明すればいいだろう? こんな例えがいいかもしれない。頭痛で病院に行ったら「この薬を飲む必要があります」と言われ、医師に所見も、その薬に副作用があるかどうかも聞かずに診察のお礼を言って帰ってきてしまうという姿勢。

 これは、わたしたちがプロプライエタリなパッケージソフトを購入するときの姿勢ではないか? だが、もしわたしたちが責任を持って、問題に対処するスキルを身に付け、必要とあればそれらを自ら直す方法を理解すれば、それは真の強みとなる。そのためのコストは、今現在、バグだらけのプロプライエタリなソフトや欠陥のある実装形態に投じているコストより、多いだろうか少ないだろうか。

 さらに、先行者メリットをあきらめる――つまり、「斬新なソリューションをいち早く採用した者が市場で優位に立つ」という、めったに立証されることのない期待を捨てることができるだろうか? 新技術が実際に長期的な(または中期的でも)優位性をもたらした例を、わたしはほとんど目にしたことがない。また、企業のビジネスでは、短期的な優位性に戦略的な価値はない(自慢話として、無知な人に説明するときの有力な社内政治材料にはなるかもしれないが)。

 オープンソースはいずれ、ビジネスの進め方を変えることになるだろう。恩恵と優位性は、機会を理解し、それを受け入れられるだけ成熟した人々に与えられる。

(By Mark Gibbs, Network World US)

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