HPはベンダーとしてITを提供するだけでなく、自らのビジネスにもフル活用している。その狙いと実態を担当者が語った。
M&A、全体最適、トレーサビリティ、コンプライアンス……企業を取り巻く環境は、厳しさを増すばかりだ。それを乗り越えるためにさまざまなIT活用が提案されるが、使いこなしも簡単ではない。
そうした中、ITベンダーではなく、IT活用企業としてのヒューレット・パッカードはどのような組織やガバナンスでITを経営に生かしているのだろうか。米国HPの社内IT部門の担当者であるビジネスインテリジェンス&情報インフラ ディレクターのフレデリック・スパランザニ(Frederic Spalanzani)氏と、戦略、アーキテクチャ&ビジネスインテリジェンス&情報インフラ標準 ディレクターのラウル・シューマッハー(Mr Raoul Schuhmacher)氏にその実態の一端をうかがった。
―― HPの社内ITの組織やガバナンスは、どのようなスタイルなのですか?
シューマッハー氏 CIOの下に「GO+IT」という組織があり、業務の組織とITの組織が一緒になったような構造になっています。1つの組織が業務とITを担当しているという点がユニークだと思います。この中に製造業としてのHPのサプライチェーンのインフラを担っているアダプティブ・インフラストラクチャ&サプライチェーンITという組織があり、われわれはその中のビジネスインテリジェンス(BI)のチームになります。
アダプティブ・エンタープライズは、HPが提供するサービスやソリューションのメッセージですが、同時に私たち自身がアダプティブ・エンタープライズになるという取り組みを実施しています。
―― アダプティブ・エンタープライズになる狙いは何ですか?
シューマッハー氏 アダプティブ・エンタープライズにおいて重要なポイントは、ITのコスト構造を変える、ということです。現状のITではメンテナンスの部分にかかるコストが非常に大きいという認識を持っています。そのメンテナンスの「コスト」を縮小して、イノベーション──システムを刷新していく「投資」にシフトしていくべく活動しています。
コンパックとHPが合併したとき、アプリケーション・インスタンスが合計7000程度ありましたが、似たような機能を持つアプリケーションを統合・削減して現在では4000になっています。データセンターも300あったものをドラスティックに統合し、85になっています。これによってインフラに関してはかなりコスト削減効果が出ています。これがフェイズ1です。
フェイズ2ではアプリケーションでは1500、データセンターは11にする計画です。またビジネスプロセスの共通化やシンプル化といった部分に着手し、現在はターゲットを決めて、それに向かって計画を立てている段階です。
―― アダプティブ・エンタープライズの中で、BIはどのような役割を果たすのですか?
シューマッハー氏 1990年代の半ばぐらいにデータウェアハウスなどの流行があってBI=ビジネスインテリジェンスという言葉が使われましたが、最近はビジビリティ──例えばサプライチェーンや経営の可視化・見える化という部分で期待されている技術がBIなのだと思います。
われわれのBIのやり方の特徴の1つは、全社の誰であっても見れば分かる1つのフレームワークを作り、それを共通言語にして全社展開するためのベースを用意していることです。
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