サーバの回で触れたように2004年初頭に大きく戦略転換したIntelは、デスクトップPC分野においても、製品ラインアップを修正しているところだ。とはいえ、第一陣となる新製品の展開は一通り終わっており、年内に新たなプロセッサ(クロック違いを除く)のリリースはない見込みだ。
その主要なラインアップは表に示したとおりで、すでに90nmプロセスへの移行はほぼ完了している。Intelは2005年末から65nmプロセスへの移行を表明済み。各種の展示会やカンファレンスなどでその動作サンプルを見せており、いまのところ大きな遅延はないものと考えられる。
●主要なIntelのデスクトップPC向けプロセッサPentium プロセッサ Extreme Edition |
Pentium 4 プロセッサ Extreme Edition |
Pentium D プロセッサ |
Pentium 4 プロセッサ 6xx |
Pentium 4 プロセッサ 5x1 |
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製造技術 | 90nm | 90nm | 90nm | 90nm | 90nm |
ソケット | LGA775 | LGA775 | LGA775 | LGA775 | LGA775 |
FSBクロック | 800MHz | 1066MHz | 800MHz | 800MHz | 800MHz |
コア数 | デュアル | シングル | デュアル | シングル | シングル |
Hyper- Threading |
サポート | サポート | なし | サポート | サポート |
論理 プロセッサ数 |
4 | 2 | 2 | 2 | 2 |
2次キャッシュ容量 | 1MB+ 1MB |
1MB+ 1MB |
800MHz | 2MB | 1MB |
NXビット サポート |
あり | あり | あり | あり | あり |
64ビット モード |
あり | あり | あり | あり | あり |
Pentium 4 プロセッサ 5x0J |
Pentium 4 プロセッサ 5x0 |
Celeron D プロセッサ 3x1/6 |
Celeron D プロセッサ 3x*J |
Celeron D プロセッサ 3x* |
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製造技術 | 90nm | 90nm | 90nm | 90nm | 90nm |
ソケット | LGA775 | LGA775 | LGA775 | LGA775 | mPGA478 |
FSBクロック | 800MHz | 800MHz | 533MHz | 533MHz | 533MHz |
コア数 | シングル | シングル | シングル | シングル | シングル |
Hyper- Threading |
サポート | サポート | なし | なし | なし |
論理 プロセッサ数 |
2 | 2 | 1 | 1 | 1 |
2次キャッシュ容量 | 1MB | 1MB | 256KB | 256KB | 256KB |
NXビット サポート |
あり | なし | あり | あり | なし |
64ビット モード |
なし | なし | あり | なし | なし |
この表で分かることは、Intelがどの技術をプロセッサのグレード付けに用い、どの技術をプラットフォームの基礎と考えているか、ということだ。Intelのプロセッサは、FSBクロック、Hyper-Threadingやコア数の違いによる論理プロセッサ数の違い、2次キャッシュ容量といった要素で、ハイエンド、メインストリーム、ローエンドの各セグメントが差別化されている。ソケットや64ビットモード(EM64T)のサポートは、すべてのセグメントに対して提供されている。言い換えれば、この3つの要素は、ユーザーに無償で提供されるもの、ということになる。現状、AMDがソケットや64ビットモードサポートをプロセッサの差別化に用いているのとは異なるアプローチだ。80%を超える市場シェアを持つIntelが、64ビットモードを無償で提供する(64ビットモードをサポートしたからといって、プロセッサの価格が上がることはない)ことは、64ビットの普及を後押しするはずであり、いずれはサーバからクライアントPCまで64ビット環境(ソフトウェアやアプリケーションも含めた)が普及すると信じる1つの根拠となっている。
現在主力となっているのは、90nmプロセスで製造されるNetBurstマイクロアーキテクチャのシングルコアプロセッサで、すべてSSE3をサポートする。これらはひとまとめにPrescottという開発コード名で呼ばれており、2次キャッシュサイズやFSBクロックの違いによる識別は特にされていない。当初は、EM64Tのサポートはなかったが、最新の製品ではCeleron DからPentium 4にいたるまですべてサポートされるようになっている。また、600番台のプロセッサナンバーを持つPentium 4プロセッサは、主要な技術を網羅した「全部入り」のシングルコアプロセッサで、近い将来、仮想化技術もこの600番台のプロセッサから導入されることになっている。Intelの説明では、この600番台のプロセッサは、どちらかといえばビジネス向けの製品だという。
これに対し、現時点においてクライアントPC向けのデュアルコアプロセッサは、コンシューマー向けの色彩が強いようだ。最上位のPentiumプロセッサExtreme Editionは、いわゆるマニア(エンスージャスト)向けという位置付けとなっている。下位のPentium Dプロセッサ(開発コード名Smithfield)との機能的な違いはHyper-Threadingの有無だけで、それが5万円近い価格差を生んでいることには議論もあるが、同時に4スレッドを処理可能なプロセッサはこのExtreme Editionしかない。
PentiumプロセッサExtreme Editionも、一般向けのデュアルコアプロセッサであるPentium Dも、1Mバイトの2次キャッシュを備えたNetBurstマイクロアーキテクチャのコアを2つ張り合わせたような構成である点は同じだ。2つのコア間およびコアとメモリコントローラ間はFSBで接続されており、プロセッサのクロック速度で接続されるAMDのデュアルコアプロセッサに比べて性能面での不利は否めない。それぞれのコアがFSBのバスインタフェースを備えているため、物理プロセッサとしては1つでありながら、バスロード(負荷)としては2つになるためか、FSBも800MHzとなる。LGA775ソケットを利用しながら、既存のチップセットと組み合わせることができないことも含め、「急ごしらえ」という印象を受ける部分だ。
その半面、AMDの項でも述べたように、Pentium Dプロセッサは導入時点から比較的価格がこなれており、ローエンドの820(2.8GHz)は3万円を切る価格設定となっている。現在、日本国内のクライアントPCは全コストのうち、プロセッサに割く予算が著しく限定されており(その分、液晶ディスプレイやDVDドライブ、テレビチューナーユニットに予算が回されている)高価なプロセッサを搭載できない状況にあるが、このPentium Dプロセッサなら店頭モデルのPCにも採用できそうだ。
PentiumプロセッサExtreme EditionならびにPentium Dプロセッサと組み合わせるためのチップセットとして、955Xチップセット(開発コード名Glennwood)と945G/Pチップセット(同Lakeport G/P)の2つのチップセットが提供される。上位の955Xチップセットには、PentiumプロセッサExtreme Editionのサポート(945G/Pは非対応)、最大8Gバイトメモリ(945G/Pは4GB)、メモリアクセスの最適化技術(MPT、以前はPATと呼ばれていたもの)のサポート、といった特徴を持つ。一方、945GチップセットはGMA950と呼ばれるグラフィックスコアを内蔵している。915チップセットの内蔵グラフィックスコア(GMA900)に対して、コアクロックが400MHzに引き上げられているほか、独立した2系統のディスプレイ出力をサポートする、といった強化が図られている。
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