Debianの新たな船出となるか? Debian Common Core Allianceが発足

 以前より今回のLinuxWorldで発表されると報道されていたDebian Common Core Allianceが正式に発表された。共通のコアを持つというUnitedLinux式戦略は果たして実を結ぶか?(追っかけ! LinuxWorld)

» 2005年08月10日 12時51分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 以前より今回のLinuxWorld Conference & Expo San Francisco 2005で発表されると報道されていたDebian Common Core Alliance(DCCA)が米国時間の8月9日、正式に発表された。発表会にはDebian Projectの創始者であり、現在はProgenyのイアン・マードック氏をはじめ、Allianceの参加企業や団体などが集結した。

イアン・マードック氏 「これはDebian Projectとのforkではない」とマードック氏

 今回の発表では、広く非商用の場面では使われているものの、コマーシャルな分野ではサポートなどの問題からあまり大きな存在ではないとされていたDebian GNU/Linuxについて、DCCAがDebian 3.1(Sarge)をベースとした共通のコアを作成、LSB(Linux Standard Base)への準拠などを行うことで、これまでDebianがエンタープライズ領域に進出するにあたって欠けていると思われていたものを補完していくことが示された。こうした動きはISVやIHVなどからすると、検証をDCCに対して行うことで参加メンバーのディストリビューションに一度に対応させることが可能になるほか、問い合わせの窓口が1つとなるため、Debian対応製品の増加につながることになる。逆に言えば、今回の参加メンバーが個々で動いていてもISVなどからの支持を取り付けられにくいという現実を考えても、こうしたアライアンス化はDebianをエンタープライズ市場で採用させる動きを促進させようとする試みであると言える。

 参加メンバーには、credativ、KNOPPIX、gnuLinEx、Linspire、MEPIS、Progeny、Sun Wah、UserLinux、XandrosといったDebianベースのディストリビューションを提供する企業・団体が現時点で名を連ねている。つまり、これらの参加メンバーは、今後出てくるDCCを共通の部分とするディストリビューションを提供することになる。

参加メンバーの一部。Sun WahのRoger so氏などの姿も
ブルース・ペレンス氏。今回の発表会でマードック氏が言葉に詰まるとすかさず代弁するなど強烈な存在感を示していた

 核となる部分を共同で作るというこの手法は、過去をさかのぼればUnitedLinuxが、最近ではAsianuxも基本的にはこの手法を取り入れている。しかし、Debianはもともと特定企業の制御下にはないベンダーニュートラルだからこそここまで広く受け入れられたという感もあるうえ、Debian Projectという極めて民主的な組織とどのように折り合いを付けていくのかといった部分で未知数の部分もある。マードック氏はDebian Projectとは協調していくとしているほか、今回加入していないDebianベースのディストリビューションを扱う団体──例えばUbuntu──などについても「今回は向こうの気が変わって入っていないが、近い将来協調できるのではないか」と述べているが、未定な部分も多分にあるようだ。

 ITmediaでは、今回の発表以前、半ばリーク気味に出ていた記事でDCCAに加わるとされていたVA Linuxに接触、DCCAに加入しなかったことについて聞いている。併せて、八田真行氏にもコメントを求めたので追って紹介しよう。

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