HPのハードCEOの「転向」

自社の重要なカンファレンスを欠席することになっていたHPの新CEOが一転、出席することに。ユーザーとの信頼関係を築く上で重要な1歩となりそうだ。(IDG)

» 2005年08月15日 20時52分 公開
[IDG Japan]
IDG

 いやはや、驚いた。米Hewlett-Packard(HP)が先週、同社CEOのマーク・ハード氏がニューオーリンズで9月開催のHP Technology Forumに、結局のところ出席することになったと発表したのだ。素晴らしい。

 最近のComputerworldの論説欄で2度述べたとおり、わたしはハード氏が、「スケジュールの調整がつかない」という理由で同社初の合同ユーザー会議を欠席しようとしていることを問題視していた。

 なぜ予定が変わったのかHPに説明を求めたところ、同社広報担当のライアン・ドノバン氏は、スケジュールの問題が解決できたとし、外部からのプレッシャーや説得によって姿勢を転換したかどうかについてはコメントを避けた。

 大きな見地に立てば、実際のところ理由はどうでもいい。HPが正しい選択をしたことは称賛に値する。だが、まだ気になる点が1つある。

 ハード氏の出席を最初から手配しておかなかったことがどれほどまずいことか、HPの上層部が予測できなかったことが、どうも理解できない。とりわけ重要な再編の時期にハード氏がこのような中核行事を欠席すれば、カーリー・フィオリーナ氏からよそよそしさのバトンを引き継いだととらえられてしまうことは、ちょっとでも広報活動に詳しい人なら分かるはずだ。Computerworldのある読者は、ハード氏が自分の会社のカンファレンスには出席できないのに翌週のOracleのカンファレンスで基調講演をするための時間は作れることについて、次のような疑問を投げ掛けている。「ハード氏は本気で、フィオリーナ氏にならってHPというかつての偉大な会社の転落に貢献するつもりか?」

 わたしの懸念は、HPの上層部が、あまりにもユーザーの事情に疎くなった結果、多くのユーザーがどれほど幻滅しているかに気付けなくなっている点だ。HP World 2001にまつわる話を詳しく報告してきた読者もいる。このカンファレンスで、当時のe3000担当プロダクトマネジャー、ウィンストン・プラザー氏は、e3000シリーズはHPの将来ビジョンに不可欠な要素であると公言した。周知のとおり、HPはそのわずか3カ月後にe3000シリーズの販売中止を発表している。そしてこの読者によると、マーケティングプログラムマネジャーのアルビナ・ニシモト氏は2002年の1月に、e3000の打ち切りはHP Worldの前に決まっていたが、上層部がHP Worldはその発表の場としてふさわしくないと判断したのだと、口を滑らしたという。

 ドノバン氏に真偽を確かめたところ、多少きれいな表現に置き換えはしたが事実上反論しなかった。ドノバン氏はわたしあての電子メールに次のように記している。「最終的にe3000のサポート中止スケジュール発表へとつながった計画において、そこから導かれる結果として鍵を握っていたのが、この決定を明確に素早く現実的な形で伝えるという目標だった。当社はこの決定の重大さに基づき、a) 上層部の最終的な承認、b) 完璧かつ適切なコミュニケーション/アクションプラン、の両方がそろった時点ですみやかに発表を行った。HP World 2001の時期には、どちらもまだそろっていなかった」

 いずれにせよ、この決定によって、少なくともこの件を報告してきた読者はダメージを受けた。「わたしにとってこの出来事は、カーリー・フィオリーナ氏の下でHPがもはや信頼できない組織と化してしまったことを意味していた」とこの読者は記している。

 HPは再度信頼を築く必要があり、ハード氏のTechnology Forum出席はそのための重要な1歩となるだろう。同氏の出席がスケジュール変更のためか、それとも考えを改めたのかを分からないが、後者であってほしいと思う。そうであれば、同氏には見込みがある。“ポスト・フィオリーナ体制”こそ、HPがユーザーに示さなければならないものなのだ。

(By Don Tennant, Computerworld US)

※本稿筆者ドン・テナントは、米Computerworld誌の編集長。

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