ITILは日々の取り組みの延長にすぎない――日立電子サービス

日立電子サービスは「ITILをうまく活用できない。何故だ?」と題したセミナーを通じて、ITILの現状と課題、そして効果について説明した。

» 2005年08月27日 01時06分 公開
[大津心,@IT]

 日立電子サービスは8月26日、「ITILをうまく活用できない。何故だ?」と題したセミナーを開催。日立電子サービス 理事 主管技師長 宮入勉氏らが、ITILの現状と同社の取り組みを説明した。

宮入氏 日立電子サービス 理事 主管技師長 宮入勉氏

 宮入氏はまず、「ITILは、昔から情報システム部門が取り組んできた“もともとあるもの”を再構築したもので、特別なことをいっているわけではない。しかし、実際に外部の視点から見ると、できていないことも多い」と説明。

 同社では、ITILという言葉が誕生する以前からBritish Standard(BS)をベースにITサービスの可視化や品質向上に取り組んでいた。しかし、同社が2005年3月にBS15000を取得した時のことを宮入氏は、「当社自身が長年ITILに取り組んでいたが、この時の外部監査では不足要素が抽出でき、改善することができた。外部監査は有効だと感じた」と述べた。

 日立電子サービスがユーザー企業にITIL導入を進める際、頻出する阻害要因は「現状把握の不足」「キーゴール不在」「運用の重要度認識が低い」「ITILへの誤解」の4点だという。

 現状把握の不足は特に多く、情報システム部門やアウトソーサーに丸投げしてしまい、運用コストやプロセスの現状認識ができていないケースが多いという。また、会社としてITILを導入する目標が定まっておらず、「誰が何のためにITILを使うのか?」といった問いに答えられない場合も多いという。

 日立電子サービス マネージメントサービス事業部 事業部長 岡博氏は、「多くの企業において開発に対して運用の重要度が軽視されている」と指摘。これにより、運用部署のモチベーションが低下し、改善や改革に対してネガティブな反応を示すケースがあるという。

岡氏 日立電子サービス マネージメントサービス事業部 事業部長 岡博氏

 また、開発部門と運用部門の確執も表面化しているとした。「ITILへの誤解」では「ツールを導入するだけでITILが導入できると考えているユーザーが多い」(岡氏)とし、全体に関連付けないままで、局所的にITILのプロセスを適用しているようなケースもあると指摘した。

 次に、岡氏は「ITILを利用するためには、ITILの原点に返る必要がある」と説明。「ITILとは昔から情報システム部門が取り組んできたノウハウやナレッジを再構築したものであり、元来企業にあるものをブラッシュアップしただけであることを忘れてはいけない」と語った。

 さらに、ITIL本来の目的は「ITサービスを提供する全組織のリエンジニアリング(最適化・効率化)」であるとし、このような目的を定めるのは、事業とITの関係を経営的観点で企画するCIOの役割であるとしている。

 日立電子サービスでは、ITILフレームワークの改善サイクルについて調査分析する「ITILコンサルテーションサービス」から、課題解決策のインプリメントなどを行う「ITマネジメント(運用)サービス」などを提供している。特に現状分析や目標設定におけるコンサルテーションは「ノウハウが溜まってきた」(岡氏)と語っている。

 実際に日立電子サービスでは、IT運営改革として2002年下半期に「IT投資」と「IT維持コスト」の割合が3:7だったものを、2006年下半期には5:5にする目標を設定。IT維持コストを2002年時点より約40%削減し、当初目標を前倒しして2005年下半期には目標の5:5を実現できそうであるとした。

 また、ITIL適用の定着によって障害件数を減らすことに成功。サービスデスクの受付件数は26%減少し、障害件数は47%減、JOBエラーメッセージ件数は51%削減できた。問い合わせ対応時間も、2004年には「30分以内の対応時間」が55%だったものが、2004年12月には83%まで向上したという。

 最後に、日立電子サービス 情報システム技術本部 IT統括部 部長 向井克幸氏は、ITILを適用して運用改善するポイントに「徹底的に現状分析する」「業務主管部署の理解意識改革が必須」「システム開発部のレベルアップ」「目標を明確にする」「実装プロセスに優先度を付ける」「まずモデルシステムで適用して検証する」の6点を挙げた。

向井氏 日立電子サービス 情報システム技術本部 IT統括部 部長 向井克幸氏

 これに加えて向井氏は「適切な外部コンサルやサービス、ツールの導入も有効」とコメントし、「ITILの適用は運用担当者だけの仕事ではなく、情報システム部門全体、さらには会社全体で取り組むべきだ」とまとめた。

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