「単純なミス」が引き起こした半日の取引停止

8月29日朝に発生したジャスダックのシステム障害の原因は、接続可能数を実情より少なく設定してしまうという「単純なミス」だった。

» 2005年08月29日 22時39分 公開
[高橋睦美,ITmedia]

 8月29日、ジャスダック証券取引所のシステムに障害が発生し、午前中の取引が全面停止日となる事態に陥った。同社が29日夕方に行った記者会見によると、原因は「比較的単純なミス」(同社代表取締役専務の菊一護氏)という。

 ジャスダックの説明によると障害の原因は、JASDAQ売買システムと顧客である証券会社のシステムとを接続する「システム間直結接続」で使用しているプログラムの不具合だ。このプログラムの設計値算出にミスがあり、接続可能数を実情より少なく設定してしまったことで、証券会社との接続が断続的になり、取引を行えない状態に陥ったという。

菊一氏 「今回の事態を大変深刻に受け止めている。外部監査も受けながら、原因の究明と再発防止に取り組みたい」とした菊一氏

 ジャスダックと証券会社との接続には2つの方式がある。1つは、今回障害が発生したシステム間直結接続で、文字通りジャスダックと証券会社のメインフレーム同士を直接接続するもの。もう1つは「JASDAQ-API接続」という方式だ。売買に関する問い合わせ機能などを備え、利便性が高いことから、119社ある取引参加企業のうち6割ほどが後者のJASDAQ-API接続方式を採用するようになっていた。

 ジャスダックではこうした状況を踏まえ、システム間直結接続とJASDAQ-API接続の接続構成数を見直し、8月26日夜、システム間直結接続の接続可能数を減らすよう設定値を変更した。しかし、この数値の計算に誤りがあり、障害につながったという。ジャスダックでは、設定変更に必要となるデータを業務委託先の日立製作所に渡していたが、このデータに誤りはなく、日立側で計算を間違えたとしている。

 クリティカルなシステムでは、事前のテストおよび障害発生時のバックアップシステムが不可欠だ。ジャスダックでも日立と協力し、設定変更に関するテストを3回実施してきた。しかし、テスト自体の前提(設計値)が間違っていたことから、ミスを見つけ出すことができなかった。バックアップシステムにしても、同様に間違っていた前提に基づく設定がなされていたため、切り替えても用をなさなかったという。

 ジャスダックのシステムに障害が発生するのは今回で3回目だが、午前中いっぱい売買が停止するのは初のケースだ。

 原因を切り分け、対応を済ませるまでに、証券会社との接続が始まって障害が顕在化した29日朝から11時前後までの数時間を要した点については、「分かってみれば原因は単純なミスだったが、つながったり落ちたりと接続が断続的だった」ことから原因究明に時間を要したうえ、「修正後確実に動作するかどうかを確認するところで時間がかかった」(ジャスダックのシステム子会社であるジャスダック・システムソリューションの専務取締役、船戸弘氏)。

 なお29日は、立会外取引の受発注を行う新システムの稼動初日にも当たっていたが、この新システムと障害の間に因果関係はなかったという。

 船戸氏は今回の障害を「システムの欠陥によるものいうよりも、運用も含めたその周辺の状況に起因するもの」と位置づけ、運用や委託先との協力手順など細かいところにいたるまで見直し、再発防止に取り組みたいとした。

 また日立側も、障害が設計値の算出ミスにあるという事実を踏まえた上で、「なぜこのように作りこまれてしまったのか、テストの段階で拾い出すことができなかったのかについて、ジャスダックとともに究明、検討していきたい」(同社広報部)とコメントしている。

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