Gartner、オープンソースを公平かつ正当に評価(2/2 ページ)

» 2005年09月26日 11時11分 公開
[Joe-Barr,japan.linux.com]
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午後のセッション

 「オープンソース・シナリオ」と題された午後のセッションは、オープンソースを話題にする危険性について語ることから始まった。例として、ドライバー氏はGartnerが過去にSlashdotなどから受け取った非難を詳しく紹介した。それは、Linuxに関するポジティブなことばかりではなく、敢えてポジティブでないことも幾つか述べたことに対する反応だった。

 このセッションは人気があり、サミットの全参加者700人のうち200〜300人がこの会場に詰めかけた。ドライバー氏は、まず、Gartnerがオープンソースを取り上げたのはこれが初めてではないと指摘した。Gartnerは、1999年にオープンソースのシンポジウムを開催しているのである。そして、次のような予測を明らかにした。

  • 2010年までに、主なIT企業の75%がオープンソース購入指針を正式に定めるだろう。
  • 2008年までに、オープンソースはあらゆるインフラストラクチャ市場でクローズドソースと競り合うようになるだろう。
  • 2010年までに、主なIT企業は、必要なインフラストラクチャ・ソフトウェアの80%についてオープンソースを候補の一つに入れるだろう。
  • 2010年までに、主なIT企業は、必要なビジネス・ソフトウェアの25%についてオープンソースを候補の一つに入れるだろう。

 次に、若干の時間を割いて、オープンソースに関する巷間の俗説を取り上げ、誤りを指摘した。OSIの定義を示し、ライセンス・モデルであるという事実を指摘し、コラボレーティブなコミュニティーという概念について説明したのである。オープンソースは「深夜のハッカー軍団」が作っているという噂を一蹴する一方、同時に、オープンソース・コミュニティーには極端な考えを持つ人も少数いることを認めた。

 次いで、プロプライエタリ・ライセンスへの対抗、草の根的なロビー活動の奏功、データ・センターを除く分野でのオープンソース・アプリケーションの成長、ほんの数社によって業界が牛耳られているという認識の拡大――Microsoft反トラスト訴訟の結果として――などを交えながら、過去数年間に見せたオープンソース・ソフトウェアの目覚ましい成長ぶりを紹介した。

 そして、話題をオープンソースにまつわる神話に移し、オープンソースは反ビジネスを意味し、主流にはなり得ず、体系的な開発がないという噂やサポートがないという神話を退けた。

 ドライバー氏は「オープンソースの生物学」を譬えとして、クローズドソースとオープンソースの主な違いをわかりやすく説明した。オープンソースは、自然淘汰、すなわち適者生存によく似ているというのである。最も重要な違いは、オープンソースではコードを排他的に管理する者がいないということであり、まさにこの理由によってクローズドソースよりもオープンソースのプロジェクトの方がニーズに合ったものが得られる可能性が高いと述べた。

オープンソース・コードを利用する際の留意点

 次に、企業がオープンソースというバスに飛び乗る前に十分に検討すべき点を列挙した。すなわち、法的リスク、資産管理、コードの正当性、総所有コスト(TCO)に関するデータの妥当性、現行環境との統合や相互運用性、移行コストなどについて検討せよというのである。

 TCOについては、ドライバー氏は若干の説明を加えた。Microsoftが資金を提供した調査も、一部のオープンソースが関与した調査も信頼すべきではないと述べ、Gartnerは資金の提供を受けて調査することはないと付言した。TCOは企業ごとに異なるため、コストを把握したければ自社の数字を使って推計するのが唯一信頼できる方法である。これが、ドライバー氏の説明の主旨である。

 朝のセッションと同様、フロアから寄せられた質問の束を持ってDale Vecchioが現れたが、2人とも質問に圧倒されていた。フロアに集まった人々がオープンソースについてさらに詳しい情報を求めていたのは明らかである。この中で、Vecchioは、彼がオープンソースの関係者を「ソフトウェアの共産主義者」と見なしたのはほんの数年前のことだが、ドライバー氏の話を聞いて考えが変わったと告白した。

 ドライバー氏の話に認識を改めたのは、わたしも同様である。このサミットでオープンソースが話題になることはほとんどなく、たとえ耳にすることはあってもそれは否定的な意見あるいは誤解だろうと、わたしは思っていたのだ。こうした先入観が全くの誤りであったことを、わたしは喜んで告白したい。マーク・ドライバー氏のオープンソースに関する講演は、誠に公平かつ正当なものであった。

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