マルチコア・ライセンスと仮想化はオープンソースへの追い風(3/3 ページ)

» 2005年09月26日 11時26分 公開
[Jay-Lyman,japan.linux.com]
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仮想化による交代

 マルチコア・プロセッサはパフォーマンスを向上する新しい手段だろうが、すべてのソフトウェアがそういった能力を必要とするわけではない、または活用できるわけではない、とIDCのアナリスト、ダン・クズネスキー氏は指摘する。この事実を盾に、企業はマルチコア・プロセッサ導入によるベンダの料金値上げに抵抗するだろうし、オープンソースの代替製品を(特に対策を早めに検討する場合に)探すことになるだろうと彼は見ている(いずれにしてもITコストの大半を占めるのは人件費であるが)。

 「あたかもコアがプロセッサであるかのように、コア単位で料金の負担を求めるベンダが現れたとき、試練が訪れます。フェアではありませんね。[ソフトウェアの]パフォーマンスの向上が見られなければ、料金を多く支払うことに企業は難色を示すでしょう」

 Microsoftはコアとは無関係なチップ単位のライセンス形態を発表したが、同社は依然としてクライアントシステムにもライセンス料を課しているので、このソフトウェア界の巨人がこの体系からの収益の多くを断念することはないだろう、と同氏は見ている。エンタープライズIT組織に変更を強いるのは困難で、現在利用されているアプリケーションが生き残る可能性は高いが、将来利用されるアプリケーションはマルチコア問題の影響を受けるだろう、と彼は指摘する。「今使っているものを必ずしも変えるのではありません。新しいことをしようとするときに、オープンソース・ソフトウェアを検討する要因になるのです」

 Oracleがコア単位の料金徴収を決めたことで業界の不満が募り、オープンソースの代替製品にチャンスが与えられている、と彼は指摘する。ただし、彼が強調するのは、Oracleを簡単に取り外して代替製品を自社アーキテクチャに取り付けることができない限り、企業が変更に踏み切ることはないだろうということである。エンタープライズで利用できるレベルに達していないオープンソースのライバル製品もあるが、PostgreSQLは、まったく同じ能力を備え、それでいてより簡単にエンタープライズに配備できるレベルに近付いている、と彼は言う。

 同氏も、Haff氏と同じ意見だ。デュアルコアやマルチコアのソフトウェア・ライセンス問題は「もっと大きな潮流の先端部分」である。もっと大きな潮流とは、仮想マシンソフトウェアと仮想化のことだ。

 「このようなシナリオに置かれた組織は、クリスマス時期に45分間だけ利用し、それ以外は1年を通してまったく使わないソフトウェアについて、フル構成の料金の負担を求められることに満足しないでしょう。そういった用途に関しては、オープンソースはとても魅力的です」

予想される移行の波

 PostgreSQLコアチームのメンバーであるJosh Berkus氏によると、同組織のライセンス形態は、マルチコア・ソフトウェアのライセンス問題のおかげでOracle、IBM、Sybaseなどのライバルに対して優位に立つと見込まれる。

 「こういった企業がライセンス・ポリシーを変更しない限り、マルチコアはプロプライエタリ・ソリューションとPostgreSQLソリューションの料金格差を広げ、その結果、PostgreSQLの魅力はアップします。OracleはOracle 10のリリースを機にライセンス料を値上げしましたが、そのときにOracle-to-PostgreSQL移行の大きな波がやってきましたね。同じことがマルチコアでも起きると期待してます」

 「うちのプラスになる料金格差は、LinuxやBSD、Apache、MySQL、FireBirdDBなど、プロセッサ単位でライセンスされるプロプライエタリ・ソフトウェアと競合するあらゆるOSSにもプラスになります。プロプライエタリ・ソフトウェアの企業は、かなりの痛手を受けてからライセンス・ポリシーを変更するでしょうが、そのときにはもう相当な数の顧客が去ってしまい、戻ってこない、ということになるといいですね」

 ライセンス問題のほかに、ソフトウェアのアップグレードが、コアの進出に伴ってオープンソースの魅力が増す要因になると、Berkus氏は考えている。「プロプライエタリ・ソフトウェアの一部、特にWindowsソフトウェアは、マルチコア・システムをサポートするために新しいバージョンを必要とします。OSSは、ターゲット・システムで互換性を持つので、一般にこの問題で困ることはありません。ライセンス料はまた別として、アップグレードの手間は、多くの企業に製品の変更をも検討させる一因となります」

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