EMCがミッドレンジ製品強化、「遠大な戦略」を仕掛ける

EMCはミッドレンジ市場でのシェア拡大を狙い、CLARiXシリーズの機能拡張を発表した。

» 2005年10月06日 22時18分 公開
[垣内郁栄,@IT]

 EMCは10月6日、ミッドレンジストレージ「CLARiXシリーズ」の機能拡張を発表した。EMCはハイエンド市場で高いシェアを持つが、ミッドレンジ市場ではサーバ製品を持つシステムベンダーと競い合っている状態。CLARiXシリーズの機能拡張でミッドレンジ市場でのシェア拡大を目指す。

 機能拡張はソフトウェアによるアプリケーション連携を強化した。レプリケーション機能の「SnapView」は複数のボリュームで一度にポイント・イン・タイム・コピーを作成する「Consistent Split」機能を追加。「MirrorView/S」は複数のボリューム同期状態を維持して、障害時にお互いをリカバリする「Consistency Group」機能が実装された。

 また、「CLARiX AX100/CX300」と「CLARiX CXシリーズ」の間でデータ移動を容易にする「SAN Copy/E」機能を搭載。支店などの拠点から中央のコアサイトに差分データをコピーすることが可能になり、バックアップや災害復旧時のデータ移動が簡単になるという。

古谷氏 EMCジャパンの執行役員 マーケティング兼パートナー営業統括本部長 古谷幹則氏

 EMCの子会社、VMwareのサーバ仮想化製品「VMware ESX server」との連携も強化した。SnapViewやMirrorViewなどのレプリケーション機能をVMwareコンソールから利用できるようにした。

 EMCジャパンの執行役員、マーケティング兼パートナー営業統括本部長古谷幹則氏はEMCによる米VMwareの買収について、「VMware製品の利用を進めるとSANが必要になることが多く、VMwareの買収はEMCにとってSANを世の中に広めるための戦略といえる。SAN市場が大きくなることで、EMCがいい思いをするという遠大な戦略」と述べた。

 EMCは同日、ハイエンドストレージの新製品「Symmetrix DMX-3」の発売も開始した。ディスクドライブの最大搭載可能数を960台まで拡張。2006年前半には1920台、2006年末には2000台以上のディスクドライブに対応する予定で、「あらゆるデータを統合できる拡張性」(古谷氏)を備えることになる。

 また、同一システム内に異なる種類のディスクドライブを格納可能にしたことで、「アレイ内階層型ストレージ」を可能にした。EMCは2006年初めに従来のディスクドライブと比較して回転数を落とした、低コストなファイバチャネル・ディスクドライブを提供開始する。作成したばかりでアクセスが多いデータは従来のディスクドライブに格納し、アクセス頻度が落ちてきたデータは低コストのドライブに移動するなど「単一筐体内で階層化ができる」(古谷氏)という。

 アクセス頻度が落ちたデータであっても、コンプライアンス対応などで要求があれば迅速に用意する必要があり、外部にストレージを用意する従来の階層型ストレージではデータ移動が間に合わないことがある。アレイ内階層型ストレージではマウントポイントを変えるだけで、データに迅速にアクセスできる。EMCによると新しい低コストのファイバチャネル・ディスクドライブは、ATAディスクドライブとほぼ同じコストになるという。

 機能拡張したCLARiXシリーズの最小構成価格は従来製品と同じで250万円から。Symmetrix DMX-3は1億9215万円から。古谷氏はSymmetrix DMX-3について「年間20台くらいの需要があるのでは」と述べた。

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