ボストンで開催中の「Siebel Customer World」では、ユーザー企業やコンサルタントが基調講演に登場し、それぞれの立場から「顧客中心戦略」の重要性を訴えた。
米国時間の10月18日、マサチューセッツ州ボストンで開催中の「Siebel Customer World」では、ユーザー企業やコンサルタントが基調講演に登場し、それぞれの立場からユーザー対応(CRM)の重要性を訴えた。
まず基調講演を行った米国の金融サービス企業、KeyCorpのケビン・リレー執行副社長は、新規口座を開設した顧客の解約率が高く、業績が伸びないという状況に直面したことがきっかけとなり、製品/サービス中心の戦略から顧客中心の戦略へと転換した経緯を紹介した。
リレー氏は、企業のトップ(CEO)の理解と支持を得ると同時に、上層部すべてに「顧客中心戦略への転換の必要性と、そうすることが最終目標である収益拡大に寄与するということをきちんと説明し、理解を得ないと転換は不可能だ」とし、具体的な経験に基づく実践的なノウハウを明かした。
続いて基調講演登場したドン・ペパーズ氏は、コンサルティング会社、Peppers & Rogers Groupの共同創設者であり、多数の書籍の執筆者としても知られている人物で、企業に顧客中心の戦略を推奨している。ペパーズ氏の講演は、彼が執筆したビジネス書のダイジェストという感じだったが、米国企業の考え方の変化が感じられる点は興味深いものだった。
ペパーズ氏は、企業にとって顧客は「貴重な資源」(Scarcest Resource)だとし、次々と新しい顧客を獲得し続ける戦略の難しさを強調した。今や「新規」顧客はほとんど期待できず、ある企業が新たに顧客を獲得するということは、競合企業の顧客を奪うことにほぼ等しいという。そして、顧客が増えないことを前提とすると、ある顧客が生涯にわたって支払ってくれる額を増やしていくことが企業の成長に繋がると指摘した。
そこでペパーズ氏は、短期的な収益の指標であるROI(Return on Investment:投資収益率)と対になる指標としてROC(Return on Customer)という考え方を提示する。ROIとこのROCは基本的に相反し、ROCを増大させるために顧客満足度を高める施策を実施すると、そのコストがROIを引き下げる関係にある。しかし、彼は顧客数を増やし続けることの困難さから、短期的利益(ROI)を無視することはできないものの、長期的な利益(ROC)と適切なバランスを保つ必要があるとした。
さらにペパーズ氏は、以下のようなROCに関する「6つの法則」も紹介した。
ITとの関連性はあまり感じられず、企業経営の一般的指針のようだったが、CRMという特定のアプリケーションから始まった動きが、「企業哲学」にまで発展したとみることもできる。「顧客中心の戦略」を最上位に置き、企業内のビジネスプロセス全体を再整理する動きが今後どこまで発展することになるのか、その動向が注目される。
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