企業市場への足掛かりを得たいMacromedia、Flex 2でリッチ体験開発のすそ野を拡大Macromedia MAX 2005 Report(1/2 ページ)

エンタープライズ市場に足掛かりを得たいMacromediaは、アナハイムで開催中の「Macromedia MAX 2005」でFlex 2のα版を公開した。豊かなユーザー体験を開発する敷居を一気に引き下げるのが狙いだ。

» 2005年10月20日 06時46分 公開
[浅井英二,ITmedia]

 プロフェッショナルデザイナーのためのツールベンダーとして知られるMacromediaが、次なるエンタープライズ市場に参入するための先兵として送り込んだのが、Webアプリケーションにもっと豊かなユーザーインタフェースをもたらす「Flex」だ。

 Macromediaの旗艦製品が、先ごろ日本国内でも出荷が始まった「Studio 8」であることに違いはないが、ここカリフォルニア州アナハイムで開催中の「Macromedia MAX 2005」においては、Flash開発のエキスパートでなくとも簡単に豊かなユーザーインタフェースを構築できるFlexや、コラボレーションの基盤へと進化する「Breeze」といったエンタープライズ市場向けの製品も大いに売り込んでいる。2日目の基調講演で隣り合わせたサンフランシスコ近郊の技術者も「BreezeではCiscoやAvayaと戦略提携しているし、コールセンターを含むCRM分野では大きな市場が見込める」と可能性を見出しているようだ。

Webアプリケーションの限界

 1990年代後半から始まったインターネットの爆発的な普及の波に乗り、配信性や保守性に優れたWebアプリケーションが登場、瞬く間に企業の中にも行き渡ったが、Webブラウザがゆえの制約も多い。

 「Webブラウザの本来の目的はドキュメントを表示すること。操作性という点では、1990年代前半のクライアント/サーバ型のグラフィカルなクライアントアプリケーションから大きく後退してしまった」と話すのはMacromediaでFlexのプロダクトマネジメントを担当するジェフ・ワトコット副社長。

日本企業でも働き、流暢に日本語を話すワトコット氏

 Webアプリケーションではオンラインとオフラインを使い分けられないし、きれいなベクターグラフィックやWYSIWYGのプリントアウトも難しい。Webブラウザはユーザーがボタンを押さなければデータを取りに行かないため、しばしば企業のアプリケーションで求められるクライアントへのデータのプッシュ配信にも対応できない。JSPやASPなどにしても、「ページ」の概念から抜け切れていない。

 また、ひと口にWebブラウザといっても、ブラウザ間での非互換があり、企業ユーザーにとっても大きな課題となっている。

 「結局のところ、最も機能の低いところに合わせるのを余儀なくされ、アプリケーションの進化が妨げられてしまっている。5年前の技術に合わせろと言っているようなものだ」(ワトコット氏)

サービス指向「クライアント」?

 こうした背景があり、Macromediaは、Webアプリケーションの配信性とクライアント/サーバ型の豊かな操作性を併せ持つ次世代のアプリケーションとして「RIA」(Rich Internet Applications)の概念を掲げ、それをできるだけ簡単に開発できるソリューションとしてFlexを用意している。

 ここへきて大手のITベンダーらはこぞって「SOA」(サービス指向アーキテクチャー)を唱え、ビジネス環境の変化にも即応できる柔軟で、かつ長期的に活用できるシステムへのシフトを主導しているが、Macromediaではクライアント環境が忘れられたままだと考える。

 「SOAPスタックなどがないため、WebブラウザはそのままではSOAのクライアントになり得ない。そしてこれが最も重要だが、操作性で大きく劣るため、技術者がアイデアをそのまま実現できない悩みを抱えている。そこでわれわれは“SOC”(サービス指向クライアント)を提唱している」(ワトコット氏)

 Flexは、Flashの開発のエキスパートでなくとも、彼らの共通パターンをフレームワークに取り込み、Flashベースのユーザーインタフェースを簡単に作成できるツール。2006年上半期には「Flex 2」の市場投入が計画されている。

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