ブラック・ジャックはロボット? 自律的な手術ロボットは必要か(3/3 ページ)

» 2005年11月08日 19時54分 公開
[丸山隆平,ITmedia]
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可視化がもたらす未来の医工連携

 これら手術ロボットシステムの取り組みに共通するのは、人体内部の可視化、つまりメディカル・イメージングだ。医療分野における画像処理は実用技術として利用している数少ない分野といえる。

かつてはX線やMRI(磁気共鳴画像)がメディカル・イメージングの世界に革命を起こしてきたが、現在では、3次元またはそれ以上の次元で可視化が可能となり、従来と比べ、対象をはるかに正確にとらえることが可能となった。人体について言えば、2次元のCTスライスと3次元の可視化映像から得られる情報、さらに時間軸や生理学的な情報を加味した、より人間に近いモデルを構築可能となったことで、肉眼で患部を見ているだけではとうてい把握できないような現象や症状まで確認できるようになった。自分が小さくなって患者の体内で作業しているかのような感覚は、1966年公開の映画、「ミクロの決死圏」を感じさせる。

 興味深いのは、ゼウスもダビンチも、自律的な手術を行う手術ロボットシステムではなく、むしろ手術支援ロボットとして位置づけられているということだ。そこには、最終的な判断は術者が行うべきであるという意志がかいま見える。つまり、手術ロボットシステムは、人間の代替がその目的ではないということだ。日本におけるロボット研究は、二足歩行に代表される自律性の確立を志向したものが多く、手術ロボットシステムのようないわゆる産業用ロボットに対する興味が薄い傾向がある。それは前述した国内における稼働台数からも見て取れる。

 そのため比較的地味なイメージがある手術ロボットシステムだが、今後の医療産業では医工連携が欠かせない。

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