“感情”を獲得したヒューマノイドが見る夢――「WE-4RII」の過去と未来コンテンツ時代の未来予想図(4/5 ページ)

» 2005年11月28日 17時00分 公開
[中村文雄,ITmedia]

個性を決定する感受個性と表出個性のマトリックス

 情動方程式による心理空間を設定しても、個性を表現することはできない。「赤は好きだけど、青は嫌い」「黒は好きだけど、ほかの色は嫌い」など人によって好き嫌いがあり、その個性が感情に及ぼす影響は各人で違う。表現をするときも同様で、人によっても状況によっても行動は変わる。同じ心理状態でも人によっては違う行動をするし、上司の前と部下の前では同じ人でも行動が違うのは当たり前のことだ。

●感受個性マトリックスの一例。センサーから入手したデータをマトリックスに当てはめることで、心理空間の3軸における感情の各移動量が決定される
感覚 刺激 △a △p △c
視覚 物を見失う
0
-
-
まぶしい光
-
0
物が近くにある
0
-
-
1
2
-
触覚 押す
-
0
なでる
たたく
-
-
聴覚 大きな音
-
0
温度聴覚 冷たい
0
-
熱い
0
-
0
きゅう覚 アルコール
アンモニア
-
0
タバコの煙
-
なし
-
0

 高西教授は、刺激を受ける際には感受個性マトリックスを、行動する際には表出個性マトリックスというフィルタを用意して、個性を表現することにした。感受個性マトリックスを見れば分かるように、“まぶしい光”をセンサーでキャッチすれば、「覚醒度(Δa)」がプラスに「快度(Δp)」はマイナスに「確信度(Δc)」は変化なし、となる。感受個性と表出個性にマトリックスを設定して、心理空間という基本構造と分離することで千差万別の心理モデルを設定可能となった。

 将来、ヒューマノイドが家庭の中に入ることになると、普及型では顔を一つ一つ変えるのは難しいかもしれない。そこで、感受個性と表出個性のマトリックスをユーザーの好みに設定することで、ユーザーのニーズに合致したヒューマノイドを供給できる。

 この心理モデルに加えて、ロボットが自発的な行動をするためにWE-4RIIには「欲求モデル」「意識モデル」「行動モデル」が設定してある。「欲求モデル」では、食欲、安全欲求、探索欲求という3要素が組み込まれている。「意識モデル」では意識がどこに向けられているかを設定しており、「行動モデル」では心理学における行動のモデルであるオペラント条件付け学習を導入した。

 「感情も情動方程式という微分方程式で表現できるとすれば、情動方程式と運動方程式を結合した方程式群が出来上がる。それらにある種の演繹法を適用すれば、ユーザーに合致したロボットの運動と情動に関する設計論が完成する。それがわたしの夢だ」(高西教授)

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