2007年問題の解決策イコール、レガシーマイグレーションと考えることはあまりにも短絡的過ぎる。
栗原 潔(テックバイザージェイピー代表取締役)
オンラインムック「構造改革としての2007年問題」。
「2007年にいわゆる団塊の世代の定年退職が始まる。これにより、メインフレームやオフコンなどの古いシステムのスキルを持つ要員が不足することになる。ゆえに、これらのレガシーシステムをUNIXサーバやWindowsサーバで置き換える必要がある」
これは、レガシーマイグレーションを推進するUNIXサーバやWindowsサーバのベンダーのマーケティングで典型的に見られるロジックだ。このロジック自体は完全に間違っているとまではいえないが、2007年問題の解決策イコール、レガシーマイグレーションと考えることはあまりにも短絡的過ぎるだろう。
まず、第一に、すべてのレガシーシステムがスキル不足による問題を抱えているというわけではないということを考えるべきだ。統計的調査を行ったわけではないが、少なくとも主流のメインフレーム製品を使っている環境においては、スキルを持った要員の減少が深刻な問題になっている状況は見られない。例えば、IBM zSeriesはベンダーのサポートも強力であり、健全なエコシステムが構築されている。
もちろん、市場において主流の位置にない製品が使われているシステムには、スキル不足の問題を抱えているものが多い。このようなシステムは社内スタッフの退職によりサポート上の問題を発生させるリスクを内包していると言える。しかし、このような問題は、それらのシステムが、市場においてマイナーな存在がゆえに生じるものであって、レガシーであること(長期的に使用されていること)がゆえに生じているものではないということに注意が必要だ。
第二に、レガシーシステムの問題点は往々にして、プラットフォームではなく、アプリケーションから生じている点に注意が必要だ。つまり、アプリケーションが現在の業務要件を適切にサポートできていない状態、または、アプリケーションが硬直化し、変更が困難であることにより、業務改革に支障をきたしているようなケースである。
このような場合には、単にプラットフォームをメインフレームから最新のサーバ製品にリプレースするだけでは問題は解決しない。場合によっては、プラットフォームはメインフレームのままで、アプリケーションのリエンジニアリングを行うことが適切な場合もあるだろう。
このようなアプリケーションのリエンジニアリングを行うためには、基幹系の業務ノウハウを有しており、それを情報システムで適切に実装できるスキルをもった要員が必要だ。このような要員が2007年問題により流出することを危惧する声も聞かれる。
もちろん、これは妥当な見方だろう。しかし、この問題の直接的な解決策はレガシーマイグレーションを行うことではない、業務と情報システムの両方のスキルを持った人材を育成することである。
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