2007年問題とレガシーマイグレーションの正しい関係構造改革としての2007年問題(2/2 ページ)

» 2006年01月16日 08時33分 公開
[栗原 潔,ITmedia]
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問題はノウハウの属人化

 最後に重要な点として、2007年問題はそれ自体が問題というよりは、より重要問題の1つの現象であると見なすべきいう点を述べておこう。人がいなくなるとその人が有していたノウハウまでもが消えてしまう。これは、ノウハウが過剰に属人化していることにより生じる現象だ。これこそが真に重要な問題といえる。2007年問題は、この根本的な問題が、たまたま団塊の世代の退職というトリガーにより顕在化した現象と見なすべきだ。

 人材の流動性が小さく、終身雇用が維持されていた旧来の日本社会では、ノウハウが属人化していても大きな問題ではなかった。仮に、ノウハウを持った人が配置転換により組織からいなくなったとしても、同じ企業内、または、関連企業内にその人が居続けることに期待できる。部署が変わったにもかかわらず、前の部署の新担当者から質問がどんどん舞い込んで来るという現象を、多くの人が経験している。

 「職人芸」や「生き字引」などの言葉に代表されるような、個人としてのプロフェッショナルスキルの価値を否定するわけではない。だが、人のノウハウを文書化したり、プロセス化したり、知識を共用することで組織の資産としたりすることに、日本企業はこれまで以上に努力を払うべきだ。

 今後の日本社会では人材の流動性がますます高まっていく。定年退職以外にも人材の社外流出は頻繁に発生するようになる。このような環境において、企業が属人化したスキルへの依存を続けていけば、毎年が2007年問題というような状況にもなり兼ねない。

 知識管理の仕組みを構築し、過剰な属人性を排除し、今後の人材の流動性の高まりに対応できるアプリケーション設計開発プロセスやシステム運用プロセスを構築していくこと、これこそが2007年問題に対応するための最善の策だ。

 この戦略を推進する過程において、レガシーマイグレーションを行うべきであることはあるだろう。しかし、2007年問題解決の最終目標をレガシーマイグレーションに置くことは適切とは言えない。レガシーマイグレーションは目標というよりも、手段と考えるべき案件なのだ。

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