今後も楽しみな“5歳児”――Technology Forum 2006開催

インテルと日本HPは、両社の戦略や最新のテクノロジー動向を紹介する「Technology Forum 2006」を開催。市場への投入から5年が過ぎたItaniumへの強力なコミットメントがあらためて示された。

» 2006年01月25日 01時27分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 インテルと日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は1月24日、両社の戦略や最新のテクノロジー動向を紹介する「Technology Forum 2006」を開催した。

 今回のフォーラムをハードウェアレベルにまで落とし込んでみると、インテルはItanium 2を、日本HPはItanium 2プロセッサを搭載したHP Integrityサーバを強く押し出していた。

 ゼネラルセッションで登場した日本HPの執行役員でエンタープライズストレージ・サーバ統括本部長でもある松本芳武氏は、市場のテクノロジートレンドとしては、集中、分散の時代を経て、統合という局面を迎えつつあると話し、さらに企業が抱えるさまざまなIT上の課題を解決できるのは、性能が高く、かつ信頼性も高く、かつ優れたものを組み合わせて運用できるインフラ技術であると話す。

 「かつて全盛だった『集中』と、これからのトレンドとなる『統合』は似ているように見えるが、もっとも優れたものを組み合わせて運用できるという意味で、シングルベンダーで構築されていた集中とは大きく異なる」(松本氏)

 同じくインテルでマーケティング本部長を務める阿部剛士氏も、今日のITの課題を各種リスクの低減、ビジネスの成長、コストの削減といった3点に抽象化し、これまで以上にITへの要求が拡大することは間違いないと話す。

 そのような状況でインテルが志向するのは、単にプロセッサの処理性能を向上でユーザーを満足させるのではなく、仮想化などに代表されるさまざまなテクノロジーなども内包した全体論的なアプローチである「プラットフォーム戦略」であるとした。そして、サーバ・プラットフォームでのキーワードは「パフォーマンス」「可用性」「保守管理性」、そして今後「ワット性能」という言葉で強く打ち出していくと見られる「効率性」を挙げている。

sx2000も数カ月以内に登場

 午後から行われたテクノロジーセッションでは、HPでビジネス・クリティカルサーバ担当ディレクターを務めるブライアン・コックス氏が、IT予算が削られる中、どの企業もより長期にわたってシステムを活用したいと考えていると話す。

ブライアン・コックス氏 「HP Integrityでサポートされるアプリケーション数はすでに6000以上、1年ごとに2倍となっている」とコックス氏

 「ハードウェアのリソースは20%程度しか使われていないもの。企業は(まだヘッドルームがある製品の)リプレイスではなく、その最大活用を希望している。このため、アップグレードが可能であったり、製品自体のライフサイクルが長いということがユーザーにとって重要なシステム選択基準となりつつある」(コックス氏)

 一方、ハードウェア技術、特にプロセッサの今後について、プロセッサ事業で十分な利益を得ているベンダーがインテル以外にいないと指摘、今後は淘汰が進み、数社だけ生き残るだろうと話す。このことが結果的にプロセッサのコモディティ化を促進し、そうしたベンダーが業界標準となることで、プロセッサ、ひいてはサーバのアーキテクチャのコモディティ化がいっそう進むだろうと予想した。

 「すでにRISCベンダー9社のうち、8社までがItanium 2を採用しているが、こうした動きがItanium 2の市場における適用サイクルをドライブしていくだろう」(コックス氏)

 そして、IPF(Itanium Processor Family)が非常に長い製品ライフサイクルを持っていることに加え、Integrityサーバが筐体内でPA-RISCおよびIPFのアップグレードが可能なこと、マルチOSで動作すること、さらには日本HPが11四半期連続でUNIXサーバ市場マーケットシェアで首位となっていることを挙げ、ユーザーのニーズに合ったものであると自信を見せた。

 同氏は講演の中で、HPが数カ月以内に発表すると見られるItanium用の新チップセット「sx2000」についても触れた。sx2000はItanium 2プロセッサの後継製品である「Montecito」(コード名)のほか、Montecitoの後に予定されるMontvale、PA-RISCではPA-8900に対応している。

 「真にメインフレームレベルの信頼性を備えたほか、チップセットのデザイン変更によりレイテンシが大幅に減少するなど、30%もの性能向上が期待できる。既存のsx1000搭載システムからsx2000搭載システムへの移行も筐体内のアップグレードだけで対応できる」(コックス氏)

 同じくテクノロジーセッションに登場したインテルのマーケティング本部部長の徳永貴士氏は、Itaniumで用いられているEPIC(Explicitly Parallel Instruction Computing)アーキテクチャが、IA32などのアーキテクチャに見られる性能向上の阻害要素に対応していることを説明する。

徳永貴士氏 「(XeonとItanium)2つの64ビットアーキテクチャはそれぞれ用途に合った選択をする必要がある」と徳永氏

 「火事が起こっているとして、それをバケツリレーで消そうとしていると想像してみてください。10回水を運べば消せるとして、1人が非常にすばやく10回運ぶことで火を消す方法と、5人が2回に分けて運ぶ方法がある。EPICアーキテクチャは後者の考えに基づくもので、複数の実行ユニットが並列で動作し、リソースを効率活用する」(徳永氏)

 いずれのアーキテクチャでも性能向上を図るには、動作周波数を上げるか、プロセッサの内部に複数のプロセッサコアを内包させる方法が考えられる。しかし、動作周波数に依存したアプローチは、今後の性能向上が大幅には見込めないことから、インテルではすべての市場セグメントでマルチコア化を進めている。マルチコア化によってスケーラビリティや、消費電力の面からも効率化が進むため、前述のように単位消費電力(ワット)あたりの性能向上が今後のポイントとなると述べた。

 「Xeonが64ビット対応を果たしたことで、Itaniumとの違いについてよく説明を求められるが、これは明確に違う。Itaniumは高い信頼性が求められる環境での利用を意図して設計されており、従来のRISCやメインフレームに比べて同等かそれ以上の信頼性を実現したことで、それらの置き換えを意図した提案を行っていくのがItaniumベースのプラットフォーム」(徳永氏)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ