コンタクトセンターを導入して顧客満足度がアップするか、あるいは、導入しなければどれだけ顧客が離反するか。導入に迷う企業はそれを基準に考えると判断しやすい。
オンラインムック「コンタクトセンターが企業の顔になる」。1回目、2回目に続く寄稿最終回。
上村陽子(ITRアナリスト)
現在、企業のコンタクトセンターに必要とされていることは、「顧客満足度の向上」「効率化」「売り上げへの貢献」であることを第2回で述べた。今回は、コンタクトセンターを、さらに進化させるためのアプローチを幾つか考えてみたい。
まず、コンタクトセンターシステムと、バックエンドやフロントエンドシステムとの連携が重要であることは言うまでもない。第1回の冒頭で、PCの修理をコールセンターに依頼したところ、該当する部品が海外から一晩で届いた話をしたが、これはコールセンターとバックエンドシステムがうまく連携している企業の一例といえよう。
なぜなら、コールセンターと在庫システムや物流システム、宅配業者などとの連携、保守サポート会社との情報共有など、多岐にわたる領域に、かなりの労力を掛けてシステムを整備していなくては、サービスの実現は困難であるからである。ここまで大規模でなくとも、既存システムとの連携が必要なケースは多いだろう。「送りたい荷物を取りに来てもらおうと宅配業者のコールセンターに電話をしたが、年末だったせいか全くつながらなかった。ところが、その後Webで申し込んだら、すぐに対応してもらえた。電話の方が早いと思っていたのに驚いた」
これも最近知人から聞いた話だが、Web受付システムと、ドライバーへの集荷指示連絡のシステムがうまく連携している例である(ちなみにこの企業は、何年も前からこの分野のシステム改善に注力している企業である)。
電話の受け付けだけでなく、そこから派生する各種プロセスも含めて連携することで、顧客はより満足度の高い経験をすることができる。そして、こういった自らの経験を基に、消費者は次に使うサービスやチャネルを決定している。
この話をしてくれた知人は「次からは絶対にWebにする」と言っていたが、この例では電話がつながらなかったことよりも、Webでの対応の早さが満足度の高さにつながったといえる。一般に、複数のシステム間を連携することは技術的なハードルが高く、もし安定して稼働している状況ならば、企業としては手を付けたくない領域であろう。また、連携したところで、大きな業務効率化の見込みがなければ後回しにされる案件ともいえる。
しかしコンタクトセンターを進化させるためには、コールセンターのシステムと他システムを個別に見るのではなく、それらを顧客サービスという1つの枠組みでとらえ、顧客サービスの改善が顧客経験の満足度を高めることに貢献するかどうかを判断する必要がある。
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