そのため、既存のオペレーターが在宅勤務できる柔軟性を組織として確保しておくことは、今後のコールセンターの運営において重要だ。
企業内においても、バーチャル化によって、コンタクトセンターに席を置かない特定分野の専門家に電話を振り分けることが容易になる。つまり、従来の固定的な配置ではなく、より自由度の高いコンタクトセンターの構想を検討することが可能になるわけだ。
またIPネットワークおよびSIP(Session Initiation Protocol)を基盤とするアプリケーションが、今後さらに進化するはずだ。顧客とのやり取りにWeb会議機能を利用するなど、高度な顧客対応も身近なものになってくるだろう。既存の硬直したシステムが弊害となって、新たな技術を採用することができないといったことがないように、さまざまな可能性を視野に入れて、将来に向けて柔軟性の高いシステムを検討していく必要がある。
企業にとって最も望ましいことは、コンタクトセンターが収益に貢献することであろう。電子商取引サイトのみならず、顧客サポートチャネルであっても、顧客とのコミュニケーションの中で、新たな利益を生み出す形態へと変革していくことが今後必要になってくる。
もちろん、無差別にアウトバウンドのコールをしたところで、大きな売り上げ効果は見込めない。私自身、会社に掛かってくる投資の電話セールスや、週末くつろいでいるときにお墓やマンションを紹介する電話を受けることがあるが、正直に言ってうんざりする。こういった電話セールスを嫌う声は多く、企業のブランド低下にもなりかねない。
ここで重要なのは、企業と顧客との間の距離感である。顧客は初期の段階では、サービス提供者との適度な距離感を好む。例えば店で何気なく商品を見ているときは、店員に近寄ってこられることを、あまり望まない。
しかし、ある程度購入の意志が出てきてどれにしようか悩んでいる段階では、親身なアドバイスなど手厚いサービスを好む。別の商品を勧められて予定よりも高い買い物をしてしまうこともあるが、結果として満足度の高いことは多い。
こういった顧客との微妙な距離感に応じた適切な対応を、コンタクトセンターで実現してくことが重要であり、そのためには顧客情報の統合および顧客情報/顧客対応履歴の分析が必須となる。大規模な分析を基に顧客をセグメンテーションして、顧客のタイプに応じてクロスセル/アップセルなど、次に取るべきアクションを決めるアプローチもあれば、コンタクトセンターのオペレーターが空き時間中に、しばらく連絡のない顧客にフォローのメールを送るといったアプローチもあるだろう。
コンタクトセンターの位置付けを変革することを含めて、企業にとってふさわしい取り組みを検討すべきである。
ここまで、コンタクトセンターの進化に向けての幾つかのアプローチを述べてきた。目新しい話ではないが、サービスレベルを高めていく上で、強化すべき基本的な事柄である。検討に当たっては新たな投資を求められる場面も多く、メリットの有無を考える向きもあろう。それは当然のことである。顧客満足度を高めるための努力は、あくまでも企業の利益を拡大させるためであり、利益を度外視して顧客サービスをしても意味がない。
しかし、「コンタクトセンターに○○円を投資して、5年で○○円のコストを削減できるのか」といった、コスト削減に傾注した考え方はやめるべきだろう。実際、コスト削減に注力しすぎた結果、「オペレーターの最大通話時間」なるものを設定したために、オペレーターが必要以上に早く電話を切ろうとしてしまうといった弊害が生まれることもある。結果として、かえってサービスレベルが低下したというケースもある。重視すべきことは、顧客経験の満足度をいかに高めていくかである。
ここで、企業がコンタクトセンターの進化に向けた計画を立てるために、下記のような評価軸を示したい。
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