「Get the Facts」への反撃が始まる――半端な真実は駆逐されるか(2/2 ページ)

» 2006年02月27日 17時17分 公開
[西尾泰三,ITmedia]
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調査結果が語る新たな“真実”

 調査は、Enterprise Management Associates(EMA)によって2005年10月から11月にかけて実施されたもので、一次調査では、無作為に抽出したIT企業数千社に対して電話アンケートを、さらに、Web経由で100社以上から自主的に回答を得たという。また、大規模なLinuxおよび異種混合の環境を導入している一部企業のCIO(最高情報責任者)およびMIS(経営情報システム)マネージャー13名に対して詳細なインタビューも実施しているという。

 「透明性もなく、限定された状況下での結果となるテストラボでの調査ではなく、200社以上の企業を対象に実地調査を行った。また、調査対象となった企業のうち、弊社の顧客は5社以下で、さらに弊社のカバーしていないセキュリティなどの管理領域のトピックを含むなど、ベンダーニュートラルな調査にすべく配慮した」(デニス氏)

 調査対象も、小規模なデータセンター規模(サーバ数20台以下)から、Fortune1000に名を連ねるようなクラス(サーバ数1000台以上)まで広範囲に渡って行われ、金融、製造、流通、教育、サービスプロバイダー、メディア、通信など20以上の業種を網羅しているという。

 「実際の結果を見てみると、回答者の大半はSMBに含まれるユーザーだった。これは意図したものではないが、『Get the Facts』が対象としていた領域を考えると注目すべき結果」(デニス氏)

 2006年2月13日に公開された調査報告書「Get the Truth on Linux Management」では、上述の調査に基づいた新たな分析結果が17ページに渡って報告されている。その中で主要な内容は以下のとおりだ。

  1. 生産性:一般にLinux管理者は、Windows管理者に比べ、一人でより多くのサーバを管理する傾向にある。LinuxシステムはWindowsシステムより大量の処理ができるので、Linuxの方が生産性は高い
  2. プロビジョニング:高度なツールを利用しているLinux管理者のうち、75%が1時間以内に、3分の1が30分以内にシステムをプロビジョニングできる
  3. パッチ管理:大半のLinux管理者が、パッチ管理にかける時間は、サーバ1台につき毎週5分以内。高度な管理ツールにより、パッチ管理に必要な労力は、より少なくなっている
  4. 問題の解決:Linux環境で問題が発生した場合、60%以上のケースでは、問題発生から30分以内に診断と修復が完了する
  5. 管理とサポート:LinuxとWindowsを導入している企業の88%は、Linuxの管理労力の方が少ない。また、97%の企業は、Linux管理にかかる労力は、最悪の場合でもWindowsと同等であると報告している。さらに、高度な管理ツールを利用している回答者の全員が、Linuxの管理作業の難易度は、Windowsの管理作業と同等、またはWindowsより簡単であるとしている。

 特に管理とサポートの部分では「Get the Facts」で述べられていた事実とは大きく異なる結果となったことに触れ、Microsoftが「Get the Facts」で示した内容は、かつてそうであったかもしれないが今はそうではなく、総合的なTCOを考えれば、Linuxにおける管理に問題があると考える必要はないとデニス氏は話す。

 一方、今回の調査結果を踏まえてなお、WindowsがLinuxと比較して有利な部分はどこかという記者の質問にデニス氏は、「ストレージのマネジメント」を挙げている。

 報告書では、「多くの場合Linuxは、Windowsに比べて、導入・管理コストを大幅に削減できるプラットフォームである」と締めくくられている。「Get the Facts」に真正面から異議を唱えるこの報告書だが、それをどこまで信じるべきだろうか。ここで触れられているサーバがどういったサーバ、つまり、ファイルサーバなのかメールサーバなのか、基幹システムにおけるサーバなのかといった情報の記載がないなど、詳細についてはこの報告書では触れられていない。

 また、LevantaはLinuxのビジネス利用を推進するOSDLのメンバー企業であることを考えれば、これがLinux側に都合のよい報告書になっている可能性もある。そもそも今回の調査費用はLevantaだけでなくOSDLも負担しており、この点でも本質的にはMicrosoftが「Get the Facts」を推進するに当たって取った手法と何ら変わりはない。

 「これまでは『Get the Facts』が市場にはほぼ独占の形で露出していたが、それではプロパガンダに過ぎない。私は、ある質問に対して最良の解にたどり着くには最低でも2つの道が必要であると考える。そのもう一つが『Get the Truth on Linux Management』なのだ」(デニス氏)

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