「Bad Word」となったCRMを復活させたカギは？（2/3 ページ）

[聞き手：谷川耕一，ITmedia]

急成長の理由

ITmedia　その背景を踏まえ、Salesforce.comの急成長の要因を分析してください。

フリーランド　それには2つの理由を挙げることができます。1つは技術的な革新を続けることです。これは、Salesforce.comがライセンスモデルではなくサブスクリプションモデルであることも影響しています。このモデルでは、顧客が常に満足するサービスを提供し続ける技術が必要だということです。

　もう1つは、顧客の成功、そしてパートナーの成功を考えてきたことです。われわれは、顧客やパートナーを満足させ続けなければなりません。その要求を上回るようなさまざまなサービス、サポートを提供してきたというのが成長の理由として大きい。ソフトウェアライセンスを売る場合には、買ってもらった後に顧客が成功しているかどうかを考えることはあまりありません。

　これに対し、サブスクリプションモデルでは、常に顧客の成功を考えていないと顧客はすぐに離れてしまいます。この部分がほかのソフトウェアベンダーと最も大きな違いです。

ITmedia　米国ではMerrill Lynchなどの大手金融企業にサービスが採用されています。高い信頼性が要求されるこのような大手企業で採用されるようになった理由は、どこにありますか。

フリーランド　重要なのは信頼を得るサービスを提供することです。最初は小さなグループから始めて、徐々に信頼を得ながら横展開していくことで、結果的に大きなサービスの採用につながっています。CRMシステムの導入には難しい点も多くあるという認識があるため、企業は「まずはオンデマンドでやってみる」といった発想をするようになってきています。この段階で、顧客の信頼を得るかが重要なのです。

ITmedia　特に大手企業では、既存システムとの連携への要望も高いと思います。そこで苦労することはありませんか。

フリーランド　大手企業は、レガシーシステムを多く抱えています。メインフレームからオープンシステムへ移行した際にも、それらを統合させる作業はとても重要でした。同様に、自社のシステムとオンデマンドのサービスを統合させることは、極めて重要なポイントです。

　現状、SCM（Supply Chain Management）のような企業内システムと連携させたい、という強い要望があります。正直に言えば、まだまだ十分に顧客の期待にこたえられていない部分もありますが、今後はAppExchangeがキラーアプリケーションとしてそれを解決していくと考えています。

ITmedia　オンデマンド型のサービスは基本的にシステムインテグレーターやコンサルティング企業が介入する余地があまり多くありません。よりビジネスを拡大していくには、これらパートナーとの連携が重要だと思いますが、アライアンスの戦略について教えてください。

フリーランド　コンサルティングやシステムインテグレーターとのパートナーシップは非常に重要です。現在、情報システムにおけるビジネスプロセスの設計は、より重要な要素になっています。コンサルティングファームには、是非この部分を担ってもらいたいと考えています。これはコンサルティングファーム本来の仕事であり、より力を発揮できる分野です。

　また、システムインテグレーターには、ぜひともAppExchangeのパートナーとして協力してほしいと考えています。例えば、CRM以外の分野を幅広く、あるいはCRMの分野をさらに深めていくようなAppExchangeアプリケーションを提供してもらいたい。