SGIのフィロソフィーは変わらず日本SGIに――SiliconLIVE!

日本SGIが提案するコンテンツ時代の新ソリューション体系「SiliconLIVE!」。ユーザーに最適なものをオートクチュールで提供する日本SGIは、コンテンツ時代におけるセレクトショップとして自身を位置づけている。SiliconLIVE!の魅力に迫った。

» 2006年03月13日 13時10分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 日本SGIが2005年11月に発表した「SiliconLIVE!」。一般にはCLM(Content Lifecycle Management)の新体系であると説明されている同ソリューションだが、この分野について具体的な悩みを抱えるユーザーからはすでに注目を集めつつある。

 そこで、日本SGIで「SiliconLIVE!」事業を手掛けるブロードバンド・ユビキタスソリューション事業推進本部執行役員本部長の斎藤智秀氏と、ビジュアライゼーション事業本部本部長の橋本昌嗣氏にSiliconLIVE!について聞いた。

SiliconLIVE!事業を支える橋本氏(左)と斉藤氏(右)

コンテンツは再利用することで価値が高まる

 SiliconLIVE!は、デジタルコンテンツの制作、編集からコンテンツ管理、著作権保護、コンテンツの配布、公開までの工程をカバーしようとするデジタルコンテンツの総合的なソリューション体系の名称である。

SiliconLIVE!の体系を図示したもの(出展:日本SGI)

 上図はSiliconLIVE!の体系を図で表したものだ。CLMを実現する6つの切り口として、「アーカイブ」「コンテンツ配信」「ユーザーインタフェース」「セキュリティ」「制作、編集、可視化」「ライツマネジメント」が掲げられている。このSiliconLIVE!の本質を斉藤氏は「コンテンツの“見せ方”に悩むユーザーに対し、コンテンツの流れをガイドするもの」と一言で表現する。

 「お客様と話をすると、ストレージの容量を拡大させることに腐心したり、配信サーバのスペックや、その2重化といった部分に悩んでいる。しかし実際はもうハードウェアで競争する時代ではなく、その上でのデータハンドリングの方法を考えるべき時代」(斉藤氏)

 一方、自らが持つコンテンツの価値自体に気がついていないユーザーも多いという。そもそも、コンテンツとは何か? どう定義するか? といった疑問に対し、橋本氏は製造業の例を挙げて次のように説明する。

 「例えば製造業では、担当者のHDDに無造作に入っているような製品の設計図や各種試験のデータのほか、製造責任者の声すらもコンテンツ。安全性の試験映像に、製造責任者のコメントを付け加えるだけで、これまで以上に強力に安全性を訴求したコンテンツが誕生する。コンテンツの面白さは“再利用”にある。自分たちがコンテンツホルダーであると気づくところが、新たなビジネスのスタートライン」(橋本氏)

 かつては、この種のビジネスでは、コンテンツの制作という部分だけが強調されたものが多かった。しかし、実際には、その周辺の問題、例えば、アーカイブの方法、著作権管理、配信に最適なエンジンなど、まさにSiliconLIVE!の切り口として掲げられているような問題がユーザーを悩ませている。これについて、他社のように一つの切り口という視点からのみでとらえるのではなく、6象限から構成されるライフサイクルをどう管理するかをコンサルティングを通してトータルで提案し、コンテンツの再利用性を高めようとするのが「SiliconLIVE!」なのだ。

 「営業で陥りがちな機能の表現の話に収束し、セキュリティなど個々の話に埋没してしまっては、トータルで提案できるSiliconLIVE!本来の良さが十分に伝わらない。常に体系的な話へ広げる方向で提案している」(斉藤氏)

 社内に眠るコンテンツを活用するのは、製造業だけに限った話ではない。最近では、官公庁をはじめ、自治体や研究機関からも大きな注目を集めているという。大学などの研究機関では独立行政法人化などの流れで、ほかの研究機関との競争優位性を高めるため、自分たちの研究成果を発表する必要性がこれまで以上に高まってきていることなどがその背景にある。そこでも注目される鍵は、体系化されたコンテンツの活用法だ。

SiliconLIVE!に死角はないか?

 日本SGIでは、SiliconLIVE!の下、さまざまな企業と協業したり、場合によっては企業に出資したりしている。過去には、すでに合併を終えたアドビシステムズマクロメディアのそれぞれと協業を発表しているほか、エム・ピー・テクノロジーズとイーブック・システムズには出資を行っている。

 さらに2005年11月には、こちらもSiliconLIVE!のUIの一つとして位置づけられている対話型リッチコンテンツ統合プレゼンテーション・ソリューション「VizImpress」の機能強化と市場拡大を目的に、カナダのContent Interface Corporation(CIC)と資本出資を含む戦略的提携を発表している(関連記事)

 「CICとの戦略的提携によって、組み込みのニーズに応えていこうとしています。他社の液晶やプラズマなど表示系のハードウェアの中にファームとして埋め込んでいくことになる」(斉藤氏)

 しかし、さまざまなベンダーと協業してソリューションの幅を広げるのは、自社の強みがどこにあるのかを問われかねない。

 橋本氏は、「日本SGIはセレクトショップであり、オートクチュールを作る集団」と自社を分析する。市場に出回る製品やソリューションを目利きし、顧客となるユーザーからはその要望を十分にヒアリングし、目利きしたものを適材適所で提案する。広範な領域において技術に裏打ちされた目利きが行えることが日本SGIの今の強みであると話す。

 また、SiliconLIVE!ではシステム構築まで手掛けるとはいえ、ERPなどのシステム構築まで踏み込むことはないし、それを日本SGIが手がける必要性もそれほど高くないという。

 「企業が注力すべきポイントは変わりつつある。かつて注力すべきポイントだと言われていたERPなどはすでにあるインフラとして考えるべき。データのインタフェースを決めることで連携は可能なので、そうした部分は必要であればERPに強い企業と提携するなどしてカバーすればよいと考える。いずれにせよCIO(最高情報責任者)が着目すべき領域は大きく変わりつつある」(橋本氏)

 橋本氏はSiliconLIVE!について、自身がSGIに入社したとき、SGIの創業者であるジム・クラーク氏が、「人間は“見たい”という本能がある。本能あるところ、ビジネスが存在する」と話していたことを実践しているだけ、と話す。方向性を同じくする企業は数あれど、サービスというレベルにまで落とし込んでユーザーに提供できるのは日本SGIだけだから自分はここにいるとも話す。

 「一瞬で情報共有を可能にするのは文字よりも絵。ビジュアルを使ったコミュニケーションの促進は今後いっそう求められるのは間違いない。その実現はSGIのフィロソフィーであり、そのフィロソフィーは変わらず日本SGIに残っていることをSiliconLIVE!の提供を通してマーケットに伝えたい」(橋本氏)


 この4月には「SiliconLIVE!」フォーラムも予定されているという。その場で具体的なソリューションやデモも展示されるだろう。

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