日系ベンダーとの争いに苦戦する外資――中堅向けERP市場強い中堅企業のIT化シナリオ(1/3 ページ)

大企業向けERPベンダーといえば外資系の各社が思い浮かぶが、中堅・中小市場向けに限っていえば、国内ベンダーが大きなシェアを持っている。ただし、外資の本格参入が市場を活性化させることは間違いない。

» 2006年03月20日 00時08分 公開
[伊嶋 謙二,ITmedia]

 オンラインムック強い中堅企業のIT化シナリオ

伊嶋 謙二(ノーク・リサーチ代表)

 今回は、第1回(2000年問題から5年、更新期を迎えた中堅・中小ERP市場)で紹介した国内ERPベンダーシェアで1、2位の富士通と大塚商会、さらに、中堅中小(SMB)市場に新規参入したSAP、Oracle、インフォベックの3社を中心に、ベンダー戦略という観点から論じながら、市場を取り巻くERPベンダーの競合関係についても、図を交えて紹介していく。

富士通と大塚商会の販売戦略の違い

 ERPベンダーにとっては未開拓で潜在需要が見込めるSMB市場だが、実際の市場アプローチでは富士通や大塚商会には根本的な違いが見られる。

 まず製品的な違いは、富士通が「GLOVIA-C」で年商50億円から300億円の顧客をターゲットにして、1つの製品でSMBを広くカバーしているのに対して、大塚商会は「Smile α AD」で年商10億円から30億円、「SMILE ie」で年商100億円から300億円をメインターゲットとすることでSMBを幅広くカバーしている点だ。

 また販売方法では、富士通がパートナーを生かした間接販売を主体にしているのに対して、大塚商会は直販がほとんどである点が異なる。富士通はいわゆるハードベンダーである。オフコン販売で培ったパートナーを「GLOVIA-C」の主力販売チャネルとして活用しているわけだ。

 富士通が、約3万社の既存オフコンユーザーとパートナーとの信頼関係を既に築いている点は、他社に対する大きなアドバンテージになっている。富士通が組織している「GLOVIAパートナープログラム」に参加するシステムインテグレーターは、オフコンのリプレース期に差し掛かったユーザー企業にGLOVIA-Cの導入を提案しやすいことも強みだ。リプレース需要が残っていることは前回も触れた通りである。

 一方、大塚商会といえばコンピュータはもちろんだが、複写機などのオフィス機器をはじめ、多種多様な商材を組み合わせた独自の複合型営業を、全国66万社あるといわれる既存顧客をターゲットに展開している。

 特徴は、大塚商会が独自に開発した「SPR=セールスプロセスリエンジニアリング」と呼ばれるデータベース営業ツールだ。このCRMシステムをベースに社内システムを構築したことが、同社ならではの直販営業の確立につながった。細かな商談もきちんと足で稼ぐ販売展開は、業界の「模範」にもなっている。

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