日系ベンダーとの争いに苦戦する外資――中堅向けERP市場：強い中堅企業のIT化シナリオ（3/3 ページ）

[伊嶋 謙二，ITmedia]

特に中堅市場にひしめく多数のベンダー

図表2■特に中堅企業にひしめく多数のベンダー。図の円の大きさはシェア、矢印の向きは競合先とみなしていることを表している。大きな矢印は市場への参入を表している

　いままで見てきた富士通、大塚商会、SAP、Oracle、インフォベックを含む主力ERPベンダーのSMB市場での競合関係はどうなっているのか。図表2.のERPベンダーの競合図を考察していきたい。

　全体的に見ると、SMB市場の中でも特に中堅企業市場（年商50億円〜500億円）には多数のベンダーがひしめき合っていて、競合関係も複雑だ。その中堅市場に大企業市場、中小企業市場から移動してくるベンダーがあることも分かる。

　まず、シェアトップの「GLOVIA-C」（富士通）を競合視するベンダーは多い。中でも互いに競合視しているのは、「OBIC7ex」（オービック）と「SuperStream」（SSJ）、「GRANDIT」（インフォベック）だ。

　SuperStreamは販売開始当時から中堅企業にフォーカスして実績を積み上げてきている。OBIC7exは中堅企業市場ではシェア2位であり、中堅企業市場は富士通と同社を軸に激戦区となっている。

　一方、「Smile α AD」（大塚商会）は既述の販売力を武器に、中小企業市場（年商50億円未満）で圧倒的な存在感を示している。「奉行新ERP」のOBCも中小企業市場の再開拓を表明しており、ここの攻防戦はまだまだ続きそうだ。

　SAPやOracleは話題で先行するが、苦戦を強いられている。この競合図からは、両社を競合視するベンダーはほとんどないとさえいえる状況だ。両社にとってチャネル不足は今後の重要な課題だが、市場全体から見れば、新規参入ベンダーが増えることは活性化につながる。もちろん、ユーザーの選択肢の幅が広がる点でも間違いなくプラスである。

　最終回となる次回は、このように選択肢の幅が広がったERPパッケージを選定する上での注意点や導入プロセスにおけるポイントを整理していく。