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» 2006年06月08日 12時59分 公開

未来のネットワークインフラに固定アドレスは必要かInterop Tokyo 2006

IPv6時代のインターネットサービスインフラについて、メディアエクスチェンジ代表取締役の吉村伸氏がその展望を語った。

[ITmedia]

 IPv6フル搭載時代を目前に控えた現在、果たしてIPv4によるインターネットサービスのインフラのままで対応できるものなのだろうか。ISPなど、サービスインフラを提供する企業にとっては戸惑いを覚える課題であり、その解答はまだ出されていない。「Interop Tokyo 2006」開幕2つめの基調講演「インターネットサービスインフラの総括と未来展望」において、メディアエクスチェンジ代表取締役の吉村伸氏は「まずはインターネットの原理を振り返ることから始めたい」と切り出した。

「ネットワークの原理を再認識すべき」と吉村氏

 インターネットの原理を振り返るという意味は、ネットワークの発展の過程を見直すことで、ネットワークの現実を再認識するということだ。最近はネットワークプロトコルを理解していないSEなどが増えており、吉村氏は「ネットワーク機器の熱を逃がすのに、ただ部屋の窓を開ければ済むと考えるベンダーもいる」と、動作環境を含めたインフラ作りが軽んじられている点を指摘した。こうした発想は、理論だけのネットワークを追っているからだと吉村氏は言う。

 例えば、光ファイバ中を移動する光の速度は真空中の光の速度とほぼ同じだが、それはあくまでも理論上の話。敷設時の光ケーブルの曲がり方や距離、中継機器、宅内ネットワークの入り口にある光回線終端装置(ONU)など、その速度を落とす要因はあらゆるところに存在する。「インターネットサービスのインフラは有限のリソースやプロトコル、敷設環境の中に存在する。そうした制限の中で、どれだけベストパフォーマンスを出すか考えるには、そもそもの原理がどうであるかを再確認する必要がある」(吉村氏)。

固定アドレスの存在意義

 そうした現状を踏まえた上で、現在のIPネットワークについて考えてみたいと吉村氏は話を進めた。現在のIPv4を基本とするIPネットワークでは、アドレスを用いて個々の接続機器を認識する。アドレスは識別子としての役割を果たすだけでなく、セキュリティ面でも効果を発揮する。例えばVPNなどは、アドレスを基にアクセス制限をかける。これはPCにとって一番負担が少ない手法であり、ISP側にすればポートVLANでブロードキャストドメインを分離するセキュリティ対策を施せるというメリットがある。

 こうして、端末に固定アドレスを振るという概念が定着し、将来的にIPアドレスが枯渇しては困るということでIPv6が登場したのだが、「本当に固定アドレスというのは必要なのか」と吉村氏は来場者に疑問を投げかける。実際、移動先でも同じIPアドレスを使用できるモバイルIPも、普及した印象がまったくない。「長時間維持しなければならないセッションがあまりなく、移動すればアドレスも変わるといった認識が一般的になっているからだ」と吉村氏は指摘する。

 では、固定アドレスは必要ないのだろうか。これに対して吉村氏は、「IPv4のIPアドレスは機器自体に割り当てるものだが、IPv6のIPアドレスは位置に割り当てるものだ。違う形での固定アドレスを生かしていくのが、これからのネットワークインフラのあり方だろう」と答えた。例えば、ある地域のネットワークに固定されたIPアドレスが割り振られ、その中に新しく入ってきたユーザーにIPアドレスを自動的に割り当てるというイメージだ。「ISPなどは、IPアドレスの名前解決をするDNSサービスや、アプリケーションのアクセス認証サービスなどを有料で展開できるかもしれない」(吉村氏)。

 IPv6によりネットワークインフラを変更する必要がなくなれば、ISPはメールやWeb、ブログといったアプリケーション層だけのサービスを提供すればよくなる。そうとなれば、新たな収入源として、コンテンツ配信ネットワークなどの課金方法も視野に入れたネットワーク作りが必要になるかもしれない。

 「今後のISPのあり方については議論の余地があり、(私自身も)どうなるか分からない。しかしその手法を考える前に、今一度インターネットの原理とは何かを見つめ直す時かもしれない」

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