統合ディレクトリで3カ月に1度の人事異動に対応――リクルートエージェント今、見直されるアイデンティティ管理(3/3 ページ)

» 2006年06月30日 07時30分 公開
[井上猛雄,ITmedia]
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3カ年計画で基幹業務システム連携も図る

 このように、リクルートエージェントではGODをコアディレクトリとしてID管理基盤の整備を着々と進めているが、システム構築中の現時点でも導入効果が現れているという。

 「まだサブシステムの連携がすべて済んでいるわけではないが、従業員情報の一元管理が行えるようになった点が一番の効果だといえる。Windowsのログインアカウントとの連携ができた点も挙げられる」(岡元氏)

 「従来はシステム部門が個別にアカウント管理をしていたが、この基盤が完全に整備されるようになれば、新しく発足したコンプライアンスオフィスにおいて、ICカードの発行やすべてのアカウント管理までを実現できるようになる。また、監査の観点から過去にさかのぼって履歴を残せる点も大きい。どのような組織に配属されていたかを時系列の情報として残せるため、当時、ユーザーがどのような権限を持っていたのかをすべて正確に把握できる」(石津氏)

 現在、同社ではアカウントの承認申請など、ワークフロー機能を連動させるべく、その実装を進めているところだ。GODは、オプションとしてワークフロー機能をサポートしており、アカウントの発行・変更・削除に合わせてアプリケーションの利用権限を付与でき、その承認プロセスを自動化することが可能だ。万が一不正利用などの問題が発生しても、トレーサビリティの観点から監査が行えるため、コンプライアンス面での効果も期待できるという。

 しかし、今後の課題もいくつか残る。同社では現在、人材あっせん用のシステムとして「Web-CALIB」と呼ばれる基幹業務システムが稼働している。これは、インターネットで各企業から登録された求人情報や転職希望者の情報などをデータべースに格納し、それらを基にカウンセラーや営業担当者がサービスを提供する、同社の業務の要となるシステムである。求人と転職希望者の情報の自動マッチング、あるいは求人情報の検索、転職者の進捗情報などの入力や閲覧、最終的な求人契約までの一連の流れをシステム化するものだ。

 このWeb-CALIBについては、独自のマスター(組織マスター/権限マスター)を使用しており、そのアカウント情報はSQL Server内に保存されている。ディレクトリとの連携は、今後の課題の1つとなっているが、実はこれが最も大きな難関でもあるという。石津氏はこの点について、次のように説明する。

 「このシステムは求職者のセンシティブな情報を大量に管理しているので、個人情報に結びつける範囲を厳密に制御しなければならない。そのため、従業員情報に基づくアカウント管理以外にも、どの機能が利用できるのか、情報をどこまで参照できるのか、その情報参照の権限もすべて厳密に細かくコントロール可能で、非常に複雑になっている」

 GOD側とWeb-CALIB側の複雑な設定のデータ整合性をいかに取っていくか、これから試行錯誤していくのだという。同社では来期以降、GSXとともに基幹業務システムの連携について重点的に着手していく予定だとしている。3年越しの計画だが、基幹業務システムを含めたすべての社内システムのアカウントを一元的に管理できるようになれば、セキュリティやコンプライアンス面からも確固たる企業基盤が完成することになる。

会社概要

  • 社名:株式会社リクルートエージェント
  • 本社所在地:東京都
  • 設立:1977年11月
  • 資本金:6億4335円
  • 従業員数:1146名(2006年4月現在)
  • 事業内容:転職エージェント(人材紹介)事業、および人材派遣(紹介予定派遣)事業

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