技術にとどまらないデータ管理の勘所今どきのバックアップ入門(2/3 ページ)

» 2006年08月28日 11時00分 公開
[堀江徹,ITmedia]

 メディアのオフサイト保管は地味な作業であるが、災害対策としては依然として重要な要素の1つである。米国などでは、バックアップテープを遠隔地で保管することを推奨している法規制もあり、コンプライアンスの視点からも大切なものとなっている。できるだけオフサイトでのメディアのライフサイクル管理を簡素化し、自動化できるのが望ましい。

 現在、遠隔地でのメディア管理もカバーするバックアップ製品は多くないが、「VERITAS NetBackup」の場合では「Vault Option」がこれにあたる。

VERITAS NetBackupでの例

リカバリ計画・体制

 バックアップシステムを導入した場合、管理者はバックアップが正常終了した時点で安心しがちだが、本当に重要なことは、データのリストアやシステムのリカバリが必要な場合に、適切な手順で正しくリカバリが実施できるということだ。データ保護の目的は、バックアップやアーカイブすることではなく、バックアップされたデータを復元または復旧する際に、事前の計画どおりに正しくリカバリできることにあるのである。

 この目的を達成するためには、事前に作業手順書や対応のための体制を整えておく必要がある。これらは、IT管理者やデータ管理者の重要な義務だろう。リカバリ時に必要となる最低限の手順書と体制準備に必要となる項目は次のとおりだ。

1.リカバリ要件分析

 バックアップの対象となるターゲットのカテゴリごとに、データ損失によるビジネスへの影響を特定する。連載の第1回で説明したRPO(Recovery Point Objective)とRTO(Recovery Time Objective)の考え方を使って、必要となるコストとのバランスを考慮しながら、ビジネスの必要要件を満たす技術や製品を検討する。

2.リカバリ計画の目標設定

 特に企業のコアとなる業務アプリケーションに対しては、リカバリ計画はなくてはならない。実際には、システムのバックアップ/リカバリに要する所要時間、システム障害が発生した場合でのアプリケーションのサービス開始までの復旧時間、またはフェールオーバー時間などを十分に検討して計画を立てることになる。また、バックアップ製品を利用した場合には、具体的な目標値を定めておくとよい。

3.作業手順書の作成

 システムが何らかの障害に陥った場合、速やかに対処するための作業手順書、複数の担当者のアサイン、ベンダーへの連絡方法を明確にしておく必要がある。手順や連絡先を文書化しておくことは、コンプライアンスにも役立つ。それだけでなく、特定の担当者のスキルに依存してしまい、どうにもならないという事態を避けることにもつながる。

4.データのリストア、システムリカバリの練習

 作成された手順書、リカバリ計画に従って、データの復元、システムの復旧を事前にシミュレーションする。シミュレーションすることで、想定した手順に漏れがないことが確認できる。実際に運用しているシステムを使用しての練習は難しいが、最低でも数人のIT技術者でレビューを行うことは重要なステップだ。例えば、サーバのハードウェア障害の場合、代替サーバをどのように用意するかなどを事前に検討しておくことが必要となる。

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