エンタープライズ向けの取り組みを強化するマイクロソフトの戦略について、日本法人のダレン・ヒューストン社長に話を聞いた。
マイクロソフトは8月29日から9月1日まで、神奈川県のパシフィコ横浜で、ITアーキテクトや開発者向けのカンファレンス「TechEd 2006 Yokohama」を開催している。技術者支援の取り組みだけでなく、先週はHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)市場への本格参入を表明するなど、エンタープライズ向けの取り組みを強化する同社の戦略について、日本法人のダレン・ヒューストン社長に話を聞いた。
ITmedia マイクロソフトが「Windows Compute Cluster Server 2003 日本語版」をリリースし、HPC市場に参入(関連記事)すると発表されました。HPC市場で先行するLinuxの牙城を崩すことは難しいといった意見もありますが、同市場での勝算をどう考えていますか?
ヒューストン マイクロソフトがサーバビジネスに参入したこと自体、まだ最近のことです。10年ほど前に同じように取材を受けていたら、きっと同じような質問を受けていたでしょう。サーバ分野はNovellが占有していて、その複雑な市場にPC向けの製品を提供するベンダー、つまりマイクロソフトが何をできるのか、と聞かれていたと思います。
しかし、大事なことは、現在の市場サイズで判断してはいけないということです。将来の市場のサイズは現在の大きさからは分かりません。その意味では、「マイクロソフトがLinuxの独占市場に参入する」というストーリーを描くとすれば、必ずしも正しくありません。マイクロソフトは、このHPC市場なら顧客に価値を提供できると判断し、そのために市場を民主化したいと考えているのです。わたしはWindows Compute Cluster Server 2003をとてもエキサイティングであるととらえています。というのも、マイクロソフトのビジネスの考え方の1つは、世界中の人々とビジネスの潜在的な可能性を模索していくことにあり、HPCへの取り組みはまさにその考え方に沿っているからです。
わたしが以前バンクーバーの大学にいたときに、Excelが発売されました。大学の教授は、「従来コンピュータ部門に依頼しなければできないような計算が机でできるようになった」と喜んでいました。今はだれでも当然のように考えている状況です。
それと同様のことが、HPCの民主化によってもたらされる可能性があります。スーパーコンピュータと人々の距離が縮まることによって、社会にも大きな変化が起きる可能性があるのです。エコシステムが形成され、スーパーコンピュータ上でアプリケーションを開発するような世界がやってくることをわれわれは目標としています。例えば、ハリケーンなどの天気を予測できるアプリケーションをだれが開発できるでしょうか。スーパーコンピュータをバックグラウンドにアプリケーションを開発すれば、いつかはそれも可能になるでしょう。
ITmedia もう1つマイクロソフトにとっての挑戦になると考えられるビジネスが、エンタープライズアプリケーション分野での取り組みだと感じています。既存の外資系ベンダー、国内ベンダーがひしめいており、また、いまなお「手作り」のシステムも多く稼働しています。そのような市場環境において、マイクロソフトがCRMやERP製品を投入する狙いについて教えてください。
ヒューストン 「挑戦」ということで逆にお聞きしますが、世界で最も利用されているエンタープライズアプリケーションは何だと思いますか? 正解はわれわれのOfficeです。Officeは水平的なアプリケーションとして幅広く利用されています。
われわれは傲慢になるつもりはありません。ただし、強みがあることも事実です。例えば.NETが日本で最も普及しているプログラム言語であることが挙げられます。さらに、.NETベースで開発しているパートナー企業は7000社に上るのです。パートナー企業には、より創造的なアプリケーションを開発してもらいたいと考えており、そこには多くのビジネスチャンスがあります。また、業界を発展させていくために、水平方向のアプリケーションを構築していく機会がかなりあるのです。
先日われわれはDynamicsを発表しました。これはCRMとERPの2本立てで構成されています。われわれはCRMを提供することで、より多くのビジネスチャンスを生み出されると考えています。
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