Microsoftの新体制は今どうなっているのか?――ビジネス分野編(1/4 ページ)

Microsoftは新年度とともに、7事業部から新しい首脳陣を配した5事業部編成へと移行した。新興事業の拡大を図ると同時に、従来事業に課した高いハードルを超えるための体制づくりが始まっている。

» 2006年09月08日 07時00分 公開
[Matt Rosoff,Directions on Microsoft]
Directions on Microsoft 日本語版

 MicrosoftのCEO、Steve Ballmer氏は、同社が新興事業から撤退する計画のないことを強調しているが、同時に、製品リリースサイクルの短期化など、コア分野についてはよりハードルの高い事業目標を掲げている。新しい首脳陣の選出、7事業部から5事業部編成への移行という動きは、これらの高いハードルを超えるための体制づくりだ。

Windowsクライアント部門:コア事業のてこ入れに首脳陣を刷新

 Microsoftの稼ぎ頭であり、デスクトップオペレーティングシステムを統括するWindowsクライアント部門は、首脳部再編のただ中にある。昨年のFinancial Analyst Meeting(FAM)以来、長年Windows部門を率いてきたJim Allchin氏、Will Poole氏、Brian Valentine氏は、引退あるいはより権限の少ないポジションへの異動を発表しており、社長のKevin Johnson氏、上級副社長のSteve Sinofsky氏およびJon DeVaan氏を中心とした新体制づくりが進められている。この体制移行は、2007会計年度末(2007年6月30日)までに完了する予定である。

 新首脳陣に課せられた使命は、Windowsのリリースサイクルの短期化である。次期バージョンのWindows Vistaは2007年度中のリリースが予定されているが、完成までに5年以上の歳月を要している。Ballmer氏は、このような事態はWindowsでも他の主要なMicrosoft製品でも、今後二度と起こさないと宣誓している。同氏は、Vistaでは一度にあまりに多くの主要機能を詰め込もうとしたことが誤りだったとし、Microsoftの製品開発戦略は“統合イノベーション”から“アジャイルイノベーション”へとシフトすると述べている。

 統合イノベーションでは、開発チーム間で開発プロセスの調整を行うものの、それぞれのチームが開発するテクノロジーに相互に依存するためスケジュールに遅れが生じる可能性が高い。一方、アジャイルイノベーションでは、各開発チームが担当製品または機能の開発に集中し、統合は二次的な目標となる。

 Vistaのリリースが延期されたにもかかわらず、2006年度のWindowsクライアント部門は芳しい業績を残した。昨年のFAMで発表された同社予想の6%を上回り、9%の成長を遂げている。

 Microsoftは今年度の同部門の収益成長率として、2006年度と同程度(8〜10%)を予想している。Johnson氏は、Vistaのリリースによる収益の躍進は期待しないようアナリストに釘を刺している。実際、2007年度はOSの新版がリリースされるにもかかわらず、PC部門の予想収益成長率は2006年度の約13%をやや下回る8〜9%とされている。

 また、リテール市場の既存PCのアップグレードも、通常はせいぜい最高で数億ドル程度の収益しか生まず(140億ドル以上とされる2007年度のWindowsクライアント部門の予想収益に比べると微々たる額である)、新しいPCチャネルの業績不振を補うことはできないだろう。

 以上の予想を示した上で、Johnson氏は2007年度のクライアント事業におけるビジネスチャンスをいくつか挙げている。Microsoftの目標達成を助けるOEMおよび米国外(振興経済地域)のリセラーは、マーケティング資金などの営業支援の形で大きな恩恵にあずかることができるかもしれない。

新興市場への注力
 Microsoftでは、PC部門の収益は先進経済国(6〜8%)よりも新興経済国(13〜16%)の方が高い成長を期待できると考えている。またこの成長は、企業ユーザーではなくコンシューマーが牽引することになるだろう(この地域のコンシューマー向けPC販売は22%もの成長が見込まれている)。Microsoftはこの需要を活かすべく、新興経済国において個人ユーザーによる新しいPCの購入支援プログラムの強化を計画している。

 例えば同社は、個人ユーザーのPC購入を支援するFlexGoプログラムを拡大する予定だ。このプログラムは、個人ユーザーがPCを一括で即時に購入できなくても、一定の時間PCの使用権が得られるプリペイドカードを購入することで、PCを利用できるようにする。そして、PCをある時間数以上使用すると自動的にそのPCはユーザーのものとなる。Microsoftはブラジルで実施した試験運用の成功を踏まえ、中国、インド、メキシコ、ロシアでFlexGoプログラムの提供開始を予定している。

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