ITベンダーを煽ったSOAの「必然性」――Gartnerアナリスト動き出したSOAのいま

「SOAは、エンジニアやビジネスマネジャー、ITマネジャーなど、その概念を受け取る人によって違った意味を持つ」と話すのは、ガートナーリサーチ ソフトウェアグループのイェフィム・ナティス氏だ。

» 2006年09月19日 08時00分 公開
[聞き手:怒賀新也,ITmedia]

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 「SOAは、エンジニアやビジネスマネジャー、ITマネジャーなど、その概念を受け取る人によって違った意味を持つ」と話すのは、ガートナーリサーチ ソフトウェアグループにおいて、バイスプレジデント兼ディスティングイッシュドアナリストを務めるイェフィム・ナティス氏だ。

 推進するベンダーと、導入するユーザーの両方の立場からSOAをとらえる同氏に話を聞いた。

Gartnerでディスティングイッシュドアナリストを務めるイェフィム・ナティス氏

ITmedia SOAの考え方が最近になって急速に普及した理由は、XMLを活用したWebサービスが技術的な基盤になったからと考えていいでしょうか?

ナティス 確かに、現在話題になっているSOAはWebサービスから派生したものといえます。しかし、Webサービスの登場以前の1995年から、Gartnerはサービス指向によるアーキテクチャーの考え方を紹介し始めています。

 米国でもユーザー企業の間ではまだ学習段階ですが、かなり現実的な選択肢になろうとしていることは確かです。2年以上前なら、「SOAって何ですか」といった質問が多く寄せられていましたが、今は「Webサービスへの問い合わせの仕方を教えてほしい」といったかなり現実的なアドバイスを求める声が多く寄せられています。

ITmedia 確かに、この1年ほどでSOAへの見方がかなり現実的なものへと変わりつつあることは、取材を通しても感じられます。理由としてはどんなことがありますか?

ナティス 理由は3つあります。まず、ITベンダーの多くがSOAにいろいろな面で投資し始めたことです。現在では、ミドルウェア製品のほとんどがSOA対応をうたっています。もはや、SOA普及の流れは避けられない状況になっているとさえいえます。

 2つ目は、SOAに関心を持つ人の層が広がったことが挙げられます。SOAの導入効果は、俊敏性、経済性、近代的であることの3つであり、どちらかというと、CEOやCIOに届きやすいメッセージでもあります。そんな中でも、ITリーダー、ビジネスリーダー、プログラマーなど、さまざまな人がSOAに興味を持つようになってきているのです。

 3つ目は、IT業界がこの10年間、アプリケーション統合にいかに苦労させられてきたかにもかかわっています。EAI(エンタープライズアプリケーション統合)製品を利用してもアプリケーション統合は難しく、ユーザー、ベンダーともに失望することも多かった。そこに登場したSOAは、まさにアプリケーション統合の効果的な実現を考える上ではベストアンサーと映ったのでしょう。

ITmedia WebMethodsやTibco、Sun Microsystemsに買収されたSeeBeyondなど、かつてのEAIベンダーの多くはいまや「SOAベンダー」になっています。また、SAPがNetWeaver、OracleがFusionというように、代表的なアプリケーションベンダーの多くが、それぞれSOAを実現するためのミドルウェアの提供に注力するようになってきています。結果として、ほとんどのベンダーがSOAを語るようになった状況ですが、これには何か理由があるでしょうか。

ナティス 幾つかの偶然も重なり合ってはいますが、基本的には、「ミドルウェアを支配しないと顧客を失ってしまう」という共通認識があることは間違いありません。ミドルウェアが上手に構築され、SOA環境が実現すると、その上に構築されるアプリケーション(いわゆるコンポジットアプリケーション)は、ミドルウェア上で作成したサービスを「単に」組み合わせたものになるといえなくもありません。そうなると、ミドルウェアを押さえない限り競争力を維持することは難しくなるのです。結果として、ベンダーの意識がミドルウェアの支配に向かうことも当然の話になってきます。



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