従業員12万人の業務を支える インテルCIOの仕事術

27カ国79サイトのIT拠点を持ち、データセンターの数は139。従業員12万人を超えるグローバル企業IntelのCIOは、何に重点を置いて仕事をしているのだろうか?

» 2006年10月23日 15時38分 公開
[堀哲也,ITmedia]

 「コスト削減だけでなく、企業の拡大・成長をIT機能が支援する。インテルITが競争力の中核の1つになることがビジョンだ」――全世界12万人の社員が利用する米Intelの社内ITインフラを支えるジョン・ジョンソンCIOが来日。その役割を話した。

 半導体最大手のグローバル企業、Intelにとって異なる地域間でのコラボレーション促進など、同社のIT基盤は、単なるコスト削減のための道具ではなく、競争力を左右する重要な機能と位置付けられている。巨大なITの全体最適などIntelのCIOのやるべきことは多い。どのような点を重視して仕事をしているのだろうか?

ジョン・ジョンソン氏 米Intel CIO兼副社長のジョン・ジョンソン氏

 ジョンソンCIOが率いる社内IT部門「インテル インフォメーション・テクノロジー」(インテルIT)は、総勢7800人。27カ国79サイトの拠点を持ち、データセンターの数は139。従業員12万人を超え、ノートPC7万7380台、デスクトップPC1万4390台をサポートしている。

ITの何をどう評価するのか?

 ジョンソン氏がCIOとして心がけているのが、「ITの能力をどう評価するか、その指標を持つことだ」という。

 「何を」にあたる領域として、同氏が注力しているのは、「IT組織」「IT投資戦略」「CEOや経営陣との連携」「IT統制と企業統制との連携」「事業目的との連携」「会社全般にわたるIT基幹性能」「新技術との連携」――の7項目。IT組織としてのスキルレベルや、競争力を高める投資領域の選別、CEOとの十分なコミュニケーション、意思決定プロセスと説明責任、新技術の採用で得られる市場競争力の分析など、といった点を重視して仕事を行っているという。

 なかでも「これを評価するベンチマークが重要になる」と考えている。そのために、社外の評価フレームワークを取り入れたり、業界全体を視野に入れた相対的な技術評価、事業部門からのフィードバックなど、さまざまな視点から、社内ITの「強み」と「弱み」を常に分析している。

 特に「気に入っている」と話すIT評価指標の1つが、業界比較による機能優位性とコスト分析を軸にしたマトリックスだ。「社内ITの位置付けが一目で分かり、CEOなどの経営陣とのディスカッションの下にできる」からだ。

IT評価マトリクス ジョンソン氏お気に入りのIT評価マトリクス

 「CEOが投資を行う分野は、エンジニアリングが中心となるが、当然、社内ITにも投資を行う必要がある。そのようなときに、こういった指標があれば、データを下にした議論ができる。投資によるトレードオフも分かる」とジョンソン氏。

vProテクノロジーと仮想化技術

 現在、興味を持っている新技術は、インテルvProテクノロジーと仮想化だという。

 vProテクノロジーは、PCの電源が落ちていたり、管理ソフトウェアのエージェントがインストールされていない端末の障害をリモートからの修復することができるIntelの新技術。マルウェアの感染によって不審なトラフィックを吐き出す端末を特定し、ネットワークから切断することもできるため、セキュリティ面でのメリットにも期待をかけている。

 vProテクノロジーの導入は、まだパイロット段階のプロジェクトというが、「リモートからの保守だけでなく、情報セキュリティモデルをクライアントで確立できるのが楽しみだ」。

 また、データセンターの仮想化技術にも取り組んでおり、現在60%というサーバ使用率を80%にまで引き上げたい、という。現在インテルがエンジニアリングに利用する6万台サーバの使用率を20%引き上げれば、それだけで1万2000台近いパワーを既存のインフラから引き出すことができるからだ。

 最後に同氏は「価値を生み出すためには、イノベーションを啓発するための文化が必要だ」とも指摘した。単なる技術採用だけでなく、ビジネスバリューを生み出す組織づくりが行えなければ、価値を生み出し続ける良いサイクルが生まれないためだという。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ