パッケージの強みを生かすには、できるだけ手を入れずに使うのが望ましい。仁藤氏は「カスタマイズは最終手段。運用でカバーできるところは、できるだけそうしていただきたいと考えています」と言う。カスタマイズしてしまうと、バージョンアップに追随するだけでも余計な負担になってしまう。
カスタマイズの必要性を減らすべく、OBCは2000年頃から業界に特化したテンプレートをオプションとして提供している。オプションにはサードパーティ製もある。
「オプションにはいろいろなお客様のニーズが蓄積され、カバーできる範囲が広がってきました。カスタマイズが必要になるケースはどんどん減ってきています。『ウチは特殊だからカスタマイズは必須』とは思わないでください」(熨コ氏)
ピーシーエー(以下、PCA)の製品ラインアップは、ERP製品「PCA Dream21」と、それ以外のパッケージに大別される。
「Dream21はマイクロソフトの.NETアーキテクチャーを採用し、カスタマイズや外部モジュール連携が容易です。9割以上のお客様が何らかのカスタマイズをした上で使っていますが、それでも低コスト、短納期でできるのが特徴です」と、専務取締役 営業本部長の折登泰樹氏は言う。むしろカスタマイズを前提とした製品ということになるだろう。
Dream21の各コンポーネントは、「PCOM」(PCA Component Object Module)という仕様のインタフェースを持っている。この仕様に合わせ、パートナーによって多数の連携ソリューションやテンプレートが作られている。
「縦割りの業務システムを廃して全体最適を実現する、というのがERPの本質だと考えています。Dream21はマスターデータベースを完全に統合しており、データの一貫性を保つことができますから、全体最適化が容易です。二重に入力する手間など一切ありませんし、リアルタイムに最新データを使うことができます」(折登氏)
Dream21は従業員100〜500名程度の企業をターゲットとしているというが、その内容は大企業向けERPに迫るものと言えるだろう。
「中小規模の企業は大企業よりIT化が遅れていると言われますが、全てがそうではありません。規模が小さくても、勝ち組と言われるような企業はITも真剣に考えていることが多いのです。例えば、入力した数字を積極的に活用していきたい、という意識があります。当社としても、そういった顧客をDream21で新規に開拓し、Dream21を今後のビジネスの柱にしていきたいと考えています」(折登氏)
複雑なカスタマイズを前提にしてシステムを考える前に、業務改革を進めながら、テンプレートの活用メリットを最大限に引き出す。これが全体最適への近道といえるだろう。
Copyright© 2010 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.