Business Objectsの年次カンファレンス「Insight Amerias 2006」では、象徴的なキーワードが何度も語られた。シュワルツCEOが狙う意図は?
米国時間の11月6日、Business Objectsの年次ユーザーカンファレンス、「Insight Amerias 2006」がサンフランシスコのモスコーニセンターで開幕した。
今回のユーザーカンファレンスでメインとなったのは、同社の事業戦略を印象付けること、そして買収した数社の技術を生かした新製品の機能紹介だ。ほかにも、2005年末にリリースされた最新バージョン「Business Objects XI Release 2」へのマイグレーションを促す「Business Objects XI Release 2」関連のセッションが大半を占めていたことも印象的だ。このことからも、同社がユーザーのマイグレーションに力を入れている姿勢がうかがえる。
なぜそこまで急ぐのか? それには理由がある。
EPM(Enterprise Performance Management)、BI、EIM(Enterprise Information Management)の3つを提供する基盤となる「Business Objects XI Release 2」に対し、既存顧客に早く移行してもらうこと。そして、ほかのBIベンダーとは異なることを明らかとし、同社のアドバンテージを早期に体験してもらいたい目論見があるからだろう。
初日のジョン・シュワルツCEOによる基調講演では、「トランスフォーメーション」という言葉が約30回以上も飛び出した。同氏は、情報を使える形にすることが重要であり、それがビジネスの鍵になるとコメントしている。
事例としてパリのディズニーランドが紹介された。同施設よりも、他地域のディズニーランドのほうが収益面で勝っていたため、同施設ではトランスフォーメーションのため、Business Objectsのソリューションを導入した。駐車場、レストラン、キオスクなどのデータを収集し、900ものリアルタイムのデータをコントロールセンターに集約、20ものダッシュボード上で、ひとめ見るだけで直感的にわかるようにデータの視覚化を行った。
パリは天候が変わりやすい。その結果、来場客の波が激しく、集中したときは長蛇の列となる。天気と交通状態を考慮し、来場した客の列が長くならないよう、調整をはかることに成功した。これにより顧客満足度が10%向上したという。
「アイディアはいたってシンプル、しかし、実現するには複雑のように思える。これがBusiness Objectsのソリューションでうまくワークした」と同氏は付け加える。
「約15年の歴史の中で、Business Objectsは大きく変わった。インフォメーションセントリックビジネスの時代が来た」と更に同氏は続ける。確かに、自社に構築したデータベースのデータだけではなく、さまざまな場所にあるデータも情報として使えることが求められている。
また、フォルクスワーゲンのアウディ事業部では、ディーラーの管理のためにダッシュボードとスコアカードを導入した。フィードバックを元にして、成績の悪いディーラーに対し、何をどう変えたらいいのかを探し出し、てこ入れを図った。その結果として自動車産業自体がもがき苦しんでいる中、同社の株価は倍になったという。
また、事例のほかに同氏は「顧客の要求を単に理解するだけのビジネスをしようとは思わなかった」と語る。要求を聞き、理解し、それをどう扱い、どう構築し、どうやって導入するかということまでを、エンジニアとパートナーで協力して実現をしてきた。つまり、製品だけでなく、コンサルティング的な部分にも力を注いでいるのである。
もちろん、顧客に導入するだけではない。同社では社内の各部署に対しても自社製品を導入して効果を上げている。例えば、エンジニアリング部門では、パフォーマンス管理に利用している。経理部では、プランニングや予算化にのために利用しているといった具合だ。
自社製品を有効活用しているという、Business Objectsの売り上げは右肩上がりだ。IDGやガートナーグループなどからもリーダーと位置づけられている。
なお今年は、インダストリ別に固有のニーズを満たすソリューションにも力を入れていく。力を入れる分野は同社が従来から強いリテール、金融、コミュニケーション、政府機関、ヘルスケアである。例えば、金融では、ATMのモニタリングなどを行い、利益の出ている顧客に対し、上位製品をすすめるという形だ。
そして、今回プレアナウンスされたのは、「Business Objects XI Rerease2 Productivity Suite」である。
本製品は2007年前半に発売予定であり、シンプルなインタフェースとハイパフォーマンスなクオリティが特徴である。その機能の一部として新たに検索機能である「Search Capabilities」が加わることとなる。
さらに買収した企業のテクノロジも続々とラインアップに加わりつつある。約2カ月ほど前に買収した英国のALGは、CostingとPerformance Managementの分野では、リーダー的存在であった。その技術を活かしたEIMも要注目だ。
最後に同氏は、「ERP、SCM、CRMなどを導入したら、その情報を使うことを考えてほしい。今ビジネスで何をしたらよいか、データを活用することについて考えてみてほしいと結んでいる。同氏のメッセージは、一貫している。情報を使える形に変革するということだ。情報が社外であれ、社内であれ、使える形にしてビジネスに役立てる。それがトランスフォーメーションであり、ビジネスの成功への早道なのである。
次に登壇した創立者でありCSO(Chief Strategy Officer)のベルナルド・リオトー氏は、同氏は5つのレボリューションをについて話した。それは、
である。
それぞれ、ユーザーについて、「簡単にアクセスできるようにシンプルに」。プラットフォームでは「1つのプラットフォームで包括的なBIを提供するプラットフォームの提供」。ネットワークについては、「インターネットを通じての情報共有」、アプリケーションは「トランザクション中心のアプリケーションの最適化およびビジネスパフォーマンスの最適化」、コミュニティでは「ともに作業し、マッシュアップ的なことを実現していく」とコメントしている。
講演のステージ上では、ワイン販売業を例としたのデモが実施された。マイデスクトップ上のウィジットが例になり、インベントリ情報や今期の売り上げのグラフが表示された。例えば、インベントリの少ないところに指示を出す場合、マネジャーの名前をクリックするだけで、メール送信画面が立ち上がる。そこには、リポートのコンポーネントをドラッグ&ドロップすれば、メール上への貼り付けもできる。また、表示された売り上げ推移のレポートに、外部から持ってきたワイン業界の景気の推移のグラフを重ね合わせてみることも可能だ。つまり、外部のマーケットトレンド情報で公開されているものがあれば、それを利用することができるわけである。また、インスタントメッセージとGoogle Mapsを両方活用したコラボレーション例も表示された。
Web2.0ならぬBusiness Intelligence 2.0をコンセプトは、以下のように整理して紹介された。
表■同氏は、まさにBusiness Objectsの戦略が、BI2.0に則っていることを示した
BI 1.0 | BI 2.0 | |
---|---|---|
特徴1 | バラバラ | 周りを取り巻いている |
特徴2 | バッチで分析 | リアルタイムでアクセス |
特徴3 | どんなデスクトップでも | どんなデバイスからでも |
特徴4 | 構造化されたクエリー | 柔軟な検索 |
特徴5 | 社内データ | Web上のデータ |
特徴6 | 個別 | コラボレーション |
特徴7 | アプリケーションのリンク | マッシュアップ |
特徴8 | 電子メール | インスタントメッセージ |
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