企業のIT戦略の根底にあるものは欲望?

米国でもPS3を求めて大行列ができた。行列に並んでいる人々は、企業のITバイヤーの大多数とほとんど同じ選択をしている――必要よりも欲望に判断をゆだねているのである。

» 2006年11月29日 09時20分 公開
[Peter Coffee,eWEEK]
eWEEK

 一般の人々に手の届く価格のデスクトップスーパーコンピューティングが11月にマスコミで取り上げられたのを、米国eWEEKラボで働く根っからの技術オタクたちが喜んだと読者は思っているかもしれない。

 残念ながら、そのスーパーコンピュータとはソニーのPlayStation 3であり、マスコミが主に報じたのは、大型小売店の外側に並んだまま動かない人々のライン(行列)であり、ソニーのゲーム機の「Cell」CPUの命令パイプラインのことではなかった。

 開発コストを回収するには大量に売りさばく必要があるとはいえ、これほどのコンピュータパワーがゲーム機に閉じ込められてしまうというのは情けない話だ。カリフォルニア州エルセグンドにある調査会社、iSuppliの連中は、PS3を「技術的傑作」と評している。iSuppliでTeardownサービスマネジャー兼シニアアナリストを務めるアンドリュー・ラスワイラー氏は、「誰かが遠くからPlayStation 3のマザーボードをわたしに見せたら、ネットワークスイッチ用かエンタープライズサーバ用のマザーボードだと思っただろう」と話している。

 しかし単なる技術的不釣り合いのせいで、PS3を買い求める行列を見たときに不快感を覚えたわけではない。こういった行列に並んでいる人々は、企業のITバイヤーの大多数とほとんど同じ選択をしているのだ。必要よりも欲望に判断をゆだねているのである。

 彼らはコンピュータとしてのパフォーマンス(あるいはコンピュータとして価格対性能比)が最も高い製品に注目しているのであり、本当に重要な指標である投資対効果には目を向けていないのだ。

 もしPS3の最高機種から600ドルに相当する楽しみが得られないとしたら、コンポーネントのコストよりも240ドル安い製品を手に入れたからといって得をしたことになるのだろうか。

 要するにわたしが言いたいのは、その追加投資がほかの娯楽形態と比較して魅力的な投資効果をもたらしているのかということだ。あなたのエンタープライズデータセンターの場合、追加投資はパフォーマンスと顧客満足度の改善につながっているだろうか。あらゆる追加投資が資本収益率の最低基準を満たしているだろうか。

 これらの質問の答えが1つでもノーであれば、どうでもよい約束を果たそうとして間違った行列に並んでいる人がいるということだ。

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