そう決意してからは、フルアクセス共有を設定しているPC所有者を割り出し、一人ずつその危険性とアクセス権の設定方法を説明して回った。その数70ユーザー。
もちろん一日で終わるはずもなく、他の仕事のかたわら、地道に1台ずつデータの共有範囲を確認し、用途に応じてアクセス権を割り当てるドメインユーザーやグループをその都度相談しながら設定を行った。その作業の必要性が分からないユーザーにも、ネットワークが終日麻痺したNimdaの名前を出せば、「何だか分からないが恐いからやってください」と理解も早く、このときばかりはNimdaに感謝したものだった。
すべてのフルアクセス共有フォルダを絶滅させて間もなく、恐れていたとおり、ネットワーク共有を介して拡散する新種のウイルスがドメイン内で流行した。しかし、我が拠点は無事感染の難を逃れた。ネットワーク共有のフルアクセスをつぶしたことが直接の要因かどうかは不明だったが、わたしは少なからず自分の仕事に満足していた。
しかし、わたしがひとりでフルアクセス共有をつぶしていた間、社外研修に参加していたA君には、まったく様子がわからなかったらしい。
A君:「今回うちの拠点が被害を受けなかった理由を考えてみたんですが」
わたし:「はあ、なんですか?」
わたしはA君がわたしの地道な作業を誰かから聞き及び、わたしを称賛してくれるものと身構えた。
A君:「神、ですね。昔からうちの拠点だけなぜだかわからないけれど、ウイルス感染を免れているんです。もう絶対、神ですよ」
そっちかい、とあごをのせていた肘もガクっと折れてしまったが、その一年後わたしも、神の存在を痛感することになる。
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