同システムは、すでに2006年9月から2週間をかけて横浜の郄島屋で試験運用が行われている。約1カ月の期間内で、行動パターンとして3000種類規模の行動推定プログラムを特定の商業エリア向けにカスタマイズした。併せて、郄島屋と共同で行動パターンと携帯電話に送信するメッセージについて緻密な打ち合わせを行い、例えば顧客が複数の店舗を訪れる場合、訪問する店舗の順序によって異なるメッセージを配信するといった工夫が施された。
高島屋での試験運用で用いられたRFIDタグリーダ内蔵携帯電話。端末の床面に取り付けられたモジュールにリーダが内蔵されている
高島屋での試験運用に用いられたICタグ。アクティブ型で常に電波を発している。試験運用ではフロアの天井に取り付けられた
そのかいもあり、試験運用参加者のシステムに対する反応はきわめて好意的だという。試験運用に参加した約650人に対するアンケート調査を行ったところ、約55%がこのサービスに「満足」と回答し、「普通」との回答を合わせた割合は全参加者の約8割にも達した。
顧客の行動を分析することで配信されたメールの一例
NTTドコモでは今後、百貨店や博物館のほか、美術館、ショールーム、テーマパーク、アミューズメント施設などで同システムの利用を検討していく考えだ。さらに、システムの機能向上にも積極的に取り組む必要があるという。
NTTドコモ 研究開発本部サービス&ソリューション開発部サービスマネジメント担当の藤井邦浩氏
行動推定プログラムのカスタマイズを担当した研究開発本部サービス&ソリューション開発部サービスマネジメント担当の藤井邦浩氏は、「行動を推定するに当たっては、顧客1人当たりの情報量が多いほどその精度は高まる。ただし、今回のシステムで収集できた情報は、店内をどのように歩いたかといったものだけ。その意味で、何を、いつ、どのように購入したのかといった情報も併せて収集できれば、精度をさらに高められるはずだ」と語る。
もっとも、顧客に関する情報を収集する手段はRFID以外にも、QRコードなどさまざまなものが考えられる。そこで同社では、RFIDのみにこだわることなく、携帯電話機能の用途開拓を多角的に推進するという。
「携帯電話の機能は、今後もますます進化していく。それらを見越して機能を使い、ユビキタス社会で高い利便性を安全に提供することがわれわれの使命。そのためのノウハウを今後も積み重ねる」(堀口氏)
同システム実用化の時期は未定だが、ショッピングセンター向けなどであれば1カ月程度で同様の環境を整備することができるという。携帯電話の機能が進化するのに伴って、このようなサービスを利用するのが当たり前の時代になっていくのだろう。
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