2006年のIT業界を振り返る――ヒットもあれば空振りも(1/2 ページ)

オープンソース分野の活発な動きとセキュリティ問題の深刻化、チップ戦争の加熱――2006年は変化とサプライズに満ちた1年だった。

» 2006年12月25日 09時00分 公開
[Jeffrey Burt,eWEEK]
eWEEK

 今年は変化とサプライズに満ちた1年だった。そして来年も、この傾向はさらに強まりそうだ。米国eWEEK編集部では、今年の動きで特に興味深いものをピックアップした。

 ITビジネスでは現状維持はほとんどあり得ず、2006年にはそれが端的に示された格好になった。

 数十年間にわたって自社の舵取りをしてきたビル・ゲイツ氏やスコット・マクニーリー氏といった大物経営者が第一線を退いた。業績不振で苦しむOEM各社をしり目に、この数年間とどまるところを知らない勢いに見えたDellも困難に直面し、3年間にわたって維持してきたPC市場でのトップシェアの座をHewlett-Packardに明け渡した。そしてMicrosoftは、かつての宿敵だったLinuxベンダーのNovellと提携した。

 こういった変化は来年も続くものと予想される。まず、MicrosoftのWindows Vistaの後半部(コンシューマー版)がリリースされる。チップメーカー各社は、マルチコア戦略をさらに推進するだろう。そして、飽くなき買収熱に燃えるOracleは拡大を続けるだろう。では、eWEEKが選んだ2006年の10大ニュースを紹介しよう。

オープンソースが花盛り

 今年の最後の四半期に入り、大手ベンダー各社が相次いでオープンソース分野に本格的に進出した。これは、大企業ユーザーにとって朗報となるかもしれない。

 Oracleは10月、RHEL(Red Hat Enterprise Linux)OSをフルサポートすると発表した。同社のラリー・エリソンCEOは「OpenWorld」ショウの来場者に、この方針は、Linuxの普及の最大の障害となっている問題に対処するのが目的だと説明した。その問題とは、「Linuxに対する真のエンタープライズサポート」の欠如だという。

 その翌月には、MicrosoftとNovellが、互いの顧客/製品を特許問題から保護することなどを含む一連の協業提携を発表した。両社の担当者は、物議を醸したこの提携の発表の席上で建前を言うだけに終始したが、Microsoftのスティーブ・バルマーCEOは、この契約はLinuxがMicrosoftの知的財産を侵害していることをNovellが認めたものだと示唆し、Novellを皮肉った。両社はその後、この点に関して見解の不一致があることを認めた

 Red Hatでは、OracleおよびMicrosoftの動きは自社に対する攻撃であると受け止めた。同社のJBoss部門のマーク・フルーリ上級副社長兼ゼネラルマネジャーは、両社の動きはRed HatによるJBossの買収に対抗するのが狙いであるとしながらも、「MicrosoftとNovellの提携は、スタンドプレーを狙ったOracleの作戦よりもずっと巧妙だ」と付け加えている(関連記事)

 また11月には、これまで数年間にわたってオープンソースコミュニティーにハードウェアとソフトウェアを提供してきたSun Microsystemsがついに、Javaの全バージョンをコミュニティーにリリースし、Javaが登場して11年間待ち続けてきた多くの開発者の望みを叶えた。

深刻なセキュリティ問題

 そこかしこに潜む数々の危険からITを保護するビジネスに携わっている人々にとって、2006年には良いニュースはなかった。ハッカーの組織化が進み、手口がいっそう巧妙化するとともに、彼らが利用する技術も高度化しつつある。

 Microsoftとミシガン大学は共同で、仮想マシンベースのrootkitのプロトタイプを作成した。このrootkitは、システムにマルウェアを忍び込ませてOSをコントロールすることにより、新たな脅威を組み込むのに利用される恐れがある。

 その後ほどなくしてMicrosoftのセキュリティ担当者が、マルウェアプログラムやある種のスパイウェアからシステムを復旧するのは、ハードディスクの中身を消去し、OSを再インストールしなければ不可能な場合があることを認めた。

 「マルウェアやスパイウェアを隠すのに利用されることが多くなってきた悪質なrootkitは、検出できない可能性があるため、IT管理者はrootkitが完全に除去されたかどうか確認することができない」――Microsoftのセキュリティソリューション部門のプログラムマネジャーを務めるマイク・ダンセグリオ氏は、4月に開催されたInfoSec Worldのプレゼンテーションで、このように語った

 eWEEKは10月、ボットネットがさらに広がりを見せていると報じた。ボットネットとは、ウイルス/ワームの攻撃で乗っ取られ、スパムやDoS(サービス妨害)、マルウェアなどの攻撃を仕掛けるのに利用されるブロードバンド対応PCの集合である。Symantecの調査によると、今年の1〜6月の間に1日当たり5万7000台のアクティブボットが検出され、470万台のコンピュータがボットネットで利用されていた。

過熱するチップ戦争

 Advanced Micro Devices(AMD)に先手を取られたとか、AMDに市場シェアを奪われたといったことを2年間にわたって聞かされ続けてきたIntelは2006年、反攻に転じた。Intelはサーバプロセッサを相次いで強化し、同社の言うところの「サーバの夏」を盛り上げた。

 この攻勢は6月、IntelのデュアルコアXeon 5100シリーズの投入で始まった。同シリーズは、同社の新しいマイクロアーキテクチャ「Core」をベースとする最初のプロセッサラインとなるもの。その後4カ月の間にIntelは、初のデュアルコアItanium 2プロセッサを含む新しいサーバ用プロセッサを2ダース以上も発表した。さらに11月には、x86市場でのクアッドコア(4コア)プロセッサのリリースでも先手を取った。

 AMDはIntelのチップ攻勢に対抗すべく、Opteronプロセッサの改良版「Rev F」を8月に投入したが、同社のクアッドコアプロセッサのリリースは2007年半ばになる見込みだ。

 それでもAMDは、Intelのクアッドコア製品の批判をやめはしなかった。2個のデュアルコアチップを1個のシリコン上に実装するというIntelのデザインは、AMDが開発中の「ネイティブ」クアッドコアと比べるとエレガントさに欠けるというのだ。AMDはOEM獲得競争でも、今年まで頑固にIntel至上主義を貫いてきたDellをはじめとする新たな戦果を収めた。

HPの不正調査

 2005年にカーリー・フィオリーナ氏からマーク・ハード氏にCEO職が引き継がれたのを機に、消滅寸前だった「HP Way」(HPの社風)の復活を期待していた人々を待ち受けていたのは失望であった。HPの取締役会が9月、情報漏えい問題の調査で「プリテキスティング」と呼ばれる不正な手法を用いて取締役や報道関係者の個人通話記録を入手したことを認めたのだ。

 プリテキスティングというのは、調査員が自身の素性を偽って電話会社から通話記録を入手するという手法。調査ではそのほかにも不正な手段が用いられた。この調査は2005年にフィオリーナ氏の在任中に始まったもので、今年、ハードCEOの指揮下で再開された。

 この調査をめぐる不祥事で、調査を指揮したパトリシア・ダン会長や情報をリークしたことを認めたジョージ・キーワース氏など3人の取締役に加え、数名のHP上層幹部が辞任に追い込まれたほか、ダン氏を含む数名が共謀などの容疑で刑事告発された。この問題は米議会の注目も集めるところとなり、ダン氏やハード氏らが公聴会で証言した。

 ハードCEOが調査で果たした役割にも疑惑の目が向けられた。同氏は、調査で用いられた手法についてはほとんど関知しなかったとしながらも、監督不行き届きがあったことを認めた。しかし取締役が直ちに、HPの社長兼CEO職にあったハード氏を会長に指名したことで、同氏に権限が集中する形になった。

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