この高速PLCモデムは、ザイセルジャパンが発売する「PLA-400」というモデル。同社は、台湾のネットワークベンダー、ザイセル・コミュニケーションズの日本法人だ。
PLA-410の前面。パワーライン、リンク、イーサネット用のランプのみが装備されているシンプルな構成で、外形も幅112×奥行き106×高さ28.5mmと小型だ。パナソニックコミュニケーションズのモデムに装備されている通信速度確認用のモニタリングランプはないザイセルが発表したPLCモデムはすでに海外で発売されているものだが、国内向けの仕様として、パフォーマンスを落とさずに厳しい規制値をクリアするよう努力したという。また、アマチュア無線やワイヤレスマウスなどとの干渉を避ける工夫も盛り込まれている。現在、総務省の型式認定を申請中で、遅くとも2007年3月末ぐらいまでには出荷される予定だ。価格は1万4000円(税別)。最低2台セットで利用されるため、合計2万8000円となる。
前述のように、同社のPLA-400はエンタープライズ向けとして、ビルやオフィス用途で展開する方針だ。ザイセルジャパンの谷田良一営業部シニアマネージャーは、「海外ではコンシューマー向け製品として、すでにPLA-100という製品を出していた。国内向けに投入する400は、これよりも性能が良い中位機種に当たる。まず法人をターゲットにしていく」と話す。
PLA-400は、最大200Mbpsの通信スピードを出せるが、実効速度としては70Mbps〜100Mbps程度になるという。大きな特徴は、干渉による速度低下が少ないこと、ファームウェアのアップグレードにより同一ライン上に最大64台までの接続が可能になること、電力線の配線環境にもよるが伝送距離を300mにまで伸ばせることなどである。機能面では、4段階のQoS(サービス品質)設定機能やIPマルチキャスト機能を搭載。もちろんビデオ、音声、データなどトリプルプレイ用途にも利用できる。
画面1●PLA-400設定画面。モデムを増設する際にネットワークにスキャンをかけ、MACアドレスを収集する。次に、リモート側からのアクセスを受け付けるためのDAKパスワードやネットワークパスワードを設定するまた、通信の暗号化方式として、AES(Advanced Encryption Standard)128ビット暗号化技術を採用している。専用ツールをPCにインストールし、増設時のコンフィギュレーション設定や、ファームウェアのアップデート、ネットワーク情報の表示が可能だ(画面1)。
このほかにも、同社ではコンセント装着型の「PLA-401」や、スイッチングハブを搭載する「PLA-470」といった製品も投入していく予定だという。特に後者は、PLCのほかにも同軸ケーブルでの利用も考えているらしく、展示品では背面に同軸ケーブルコネクタ用のスペースが用意されていた。今後は単機能タイプのPLCモデムだけでなく、このような多機能タイプも続々と登場してくるだろう。
エンタープライズ向けの高速PLCモデム分野におけるデファクトスタンダードの行方は、今はまだ分からない。だが、いよいよ国内でもHPA陣営の高速PLCモデムが登場してきたことで、各社間の競争も加速しそうだ。
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