社内システム総責任者A部長のツルの一声女性システム管理者の憂鬱(2/4 ページ)

» 2007年02月20日 08時00分 公開
[高橋美樹,ITmedia]

ウイルス発生

 それから数日後、早番だったわたしが朝8時に出社すると、ネットワークの監視状況を確認していた運用マネジャーから、トラフィック異常の連絡を受けた。すぐに調査を開始すると、どうも前日海外で発生したウイルスによる影響のようだった。

 ウイルス対策ソフトメーカーの情報によると、既に対応済みの定義ファイルが公開されており、社内システムでも各配信サーバへの取り込みが始まっていた。あとは、それぞれのサーバからクライアントへと配信されれば万全のはずだ。現状と見通しをマネジャーに報告し了承をもらったわたしは、社内で行われる定義ファイル配信システムの定例会議に出席した。

 定例会議では、以前から懸案となっていたトラブルについて重要な話し合いが行われていたのだ。その現象は、定義ファイルの配信サーバの一部が、新しいファイルを受け取っても更新されず、その下に紐づいているクライアントに定義ファイルが配布されないという致命的なものだった。

 解消するためには、該当のサーバを再起動するしか手はない。本来、再起動しなくても新しいファイルを受信後、クライアントへの配信が実行される仕様である。当時、数十台ある配信サーバのうちランダムに1、2台が不定期にこの異常を起こすことが確認されていた。なかなか解決しない事象について、設計チーム担当者がメーカーからの回答を報告していると、会議室のドアが突然バン! と開かれた。

「××さん、緊急です」

 運用チームメンバーの1人がわたしの名前を口にした。一瞬にして会議室内の空気が凍りつく。

わたし:「え? わたし? 」

メンバー:「A部長がお呼びです」

 会議室にいた全員の目が私に向いた。A部長とは親会社の社内システム総責任者として、めったにお目にかかれない存在だ。作業申請書のスタンプラリーの最終決裁者でもあるこの責任者が、わたしに何の用があるというのだ。急いで席に戻らなければ、頭では分かっていてもあまりのことに身動きもできなかった。

 意を決して自席に戻ると、運用マネジャーが状況を説明してくれた。朝、攻撃をしかけてきたウイルスが社内にまん延し、ネットワークが麻痺しているという。そのため、先ほど定義ファイル配信の状況を部長自らが確認しようと、運用チームまで出向いてきたのだった。急ぎ自席で定義ファイルの配信状況を確認していると、すぐそばに人の気配を感じた。こわごわ見上げると、そこには仁王立ちしているA部長の姿があった。

A部長:「君、ウイルス対策ソフトの担当? 今、どういう状況か説明して」

 運用マネジャーを無視して、直接わたしに話しかけてくる。そんな異例の対応に、余計事の重大さを思い知らされる。

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