あっけないほどお手軽!? PLCの使い勝手と性能を検証する「エンタープライズPLC」のススメ(3/4 ページ)

» 2007年02月26日 08時00分 公開
[井上猛雄,ITmedia]

PLCの大敵はやはりケータイの充電器

 さて、実際のパフォーマンス測定についてだが、この製品の理論上で通信速度は190Mbps、実効速度はUDPで約80Mbps、TCPで約55Mbpsの性能があるとうたわれている。もちろん通信速度はベストエフォートであり、電力線の状態やネットワークの環境によって変わってくるので、常に最高値が出るとは限らない点を考慮しておきたい。

図1 図1●筆者宅のレイアウト。今回は1Fリビングから2Fの仕事部屋間をPLCで結んで実験した

 今回、実験した筆者宅のレイアウトを図1に示す。分電盤は浴槽横の洗面所に配置されている。家庭内の分電盤は通常、上下2段にブレーカーが並んでいる。一般家庭の単相三線式100V配線には、L1相、L2相という2種類がある。筆者宅の分電盤は上段がL1相、下段がL2相になっている。L1相とL2相間の異相間で通信を行う場合は、同相間の通信に比べて信号が多少減衰することがあるので注意しよう。

画像 家庭内の分電盤には上下2段にブレーカーが並んでいる。写真の筆者宅の分電盤は上段がL1相、下段がL2相。L1相/L2相間の異相間通信の場合は、同相間の通信に比べて信号が多少減衰する

 実験を行った場所は、1階(1F)リビングと2階(2F)の仕事部屋の2カ所。1FリビングにはデスクトップPCがあり、2Fの仕事部屋にはノートPCが置いてある。デスクトップPC側にサーバを立て、クライアントのノートPCからサーバ側に置いた100MBのファイルをFTPでget、putし、それぞれ3回の転送時間の平均値に基づいて通信速度を算出した。

画像 2F仕事部屋での測定環境。PLCアダプタをコンセントにじか付けした場合と、30mのドラムコードを介して測定した場合
画像 写真のようにドラムコードのコンセントにケータイ充電器やPDAの電源アダプタを差してみた

 2F仕事部屋に置いたノートPCは、PLCアダプタをコンセントにじか付けした場合と、さらに30mのドラムコードを利用して距離を延長して接続した場合、またドラムコードにケータイ用充電器やPDA用ACアダプタも接続した(いずれもメーカーでは推奨していない方法)場合で、それぞれ測定してみた。PLCアダプタの配置条件は次のとおり。

  • 1F同一コンセントじか付け
  • 1F同一コンセントじか付け+ケータイ充電器
  • 1F-2F間 コンセントじか付け
  • 1F-2F間 ドラムコード30m延長
  • 1F-2F間 ドラムコード30m延長+ケータイ充電器
  • 1F-2F間 ドラムコード30m+ケータイ充電器+ACアダプタ

 速度測定の結果を表1に示す。結果からいうと、筆者宅では体感しているほど数値的には速度が出ていないようだ。ほかの人の実験では、40Mbpsぐらい出たという話もあるが、自宅1Fリビングで同一コンセントに接続した場合に15Mbps前後、1F-2F間のコンセントじか付けの場合で11Mbps前後といったところ。また、2Fから電力線経由でインターネットに接続した場合の通信速度は約3.84Mbpsであった。こちらは、もともと8Mbpsの低速ADSLサービスを利用しているので、このくらいの値が妥当と思われる。

表1●速度の測定結果
転送方向 get put
PLC(1F同一コンセント) 14.2 15.2
PLC(1F同一コンセント)+ケータイ充電器 10.5 12
PLC(1F-2F間) 10.6 12.3
PLC(1F-2F間+ドラムコード30m) 10.7 12.2
PLC(1F-2F間+ドラムコード30m)+ケータイ充電器 8.1 8.7
PLC(1F-2F間+ドラムコード30m)+ケータイ充電器+ACアダプタ 4.3 4.2
100MBのファイルを転送した結果。数値は3回の平均値(単位:Mbps)

 実験結果で興味深かった点は、やはりケータイの充電器の影響だ。マニュアルでも事前に注意されているが、ケータイの充電器を入れると、3〜4Mbpsほど速度が落ちてしまった。この値は、1F-2F間での速度の低下とほぼ同等だ。つまり、充電器を1つ接続するだけでも、1F-2F間での伝送損失やノイズの影響と同じぐらい影響が出てしまうことになる。

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