Expression Webをリリース、新たな分野へ挑むMS

MicrosoftからWebサイト作成ツール「Expression Web」がリリースされた。デザイナーと開発者のコラボレーションをテーマとした「Expression」ブランドとして発売される、初めての製品となる。

» 2007年02月28日 08時30分 公開
[Greg DeMichillie,Directions on Microsoft]
Directions on Microsoft 日本語版

 MicrosoftがリリースしたWebサイト作成/保守のため新ツール「Expression Web」では、ASP.NET 2.0の各種機能のほか、Cascading Style Sheet(CSS)などの主要なWeb標準のサポートが強化されている。ただし、同社のこれまでの各種Webツールとは異なり、Expression Webは別途単独で購入する必要がある。Expression WebはMSDN Universalのサブスクリプションには含まれていないからだ。Expressionファミリーとしてリリース予定のそのほかの新製品についても同様だ。

Web標準のサポート

 FrontPageとVisual StudioはどちらもHTMLをWYSIWYGで編集できるが、いずれもデザイナーのニーズを念頭に置いて設計されたツールではない。例えば、Visual Studioはかなり大規模なアプリケーション開発プロジェクトにも対応できるよう設計されたプロジェクトシステムを使用するが、これは大半のWebサイトにとっては過剰だ。一方、FrontPageは既に販売が打ち切られている。

 Expression Webは、MicrosoftのWebツールのラインアップにおける重大な隙間を埋める製品だ。Expression WebはプロフェッショナルなWebサイト設計者向けのツールであり、各種の主要なWeb標準をサポートする。

CSS CSSは、Webサイト設計者がWebページの体裁を指定する際に使用する最も一般的な方法だ。CSSでは、色やフォントなどの書式情報をWebページの各エレメントに組み込む代わりに、それらを記述したスタイルシートを作成し、それを用いてページのエレメントにスタイルを適用できる。その後は、各ページのエレメントごとに変更を加えなくても、スタイルシートを更新するだけで、サイトの体裁を変更できる。Expression Webでは、WYSIWYGでスタイルシートを作成/更新したり、結果をプレビューしたりできる。例えば、テキストのブロックのフォントを変更すると、その基底にあるスタイルシートにも自動的に変更が加えられる。Expression WebはInternet Explorer 6.0で使われているCSSのサブセットのほか、CSSのバージョン1.0/2.0/2.1をサポートする。

XHTML Expression WebはXHTMLをサポートする。XHTMLはHTMLとXMLの言語環境を統合したもの。HTMLのオリジナルの仕様にある各種の問題を修正する目的で、World Wide Webコンソーシアム(W3C)により開発された。さらにExpression Webは、XHTML 1.1のほか、XHTML 1.0 Strict/Transitional/Framesetなど、XHTMLの各種のバージョンをサポートする。またExpression Webは、設計者が入力したカスタムコードが選択されたフォーマットに適合しているかどうかを確認するようになっている。

 Expression WebはあらゆるWebサーバ向けのWebサイト作成に利用できるが、一部の機能は特にMicrosoftのASP.NET 2.0技術を活用するようになっている。例えば、ASP.NET 2.0のマスターページ機能を使えば、同じサイトの複数ページに共通するレイアウトの定義が容易になる。

価格は高くないが、MSDNのサブスクリプションに含まれない

 Expression Webの推定小売価格は299ドル(日本語版の税別参考価格は3万7800円)。Adobe Dreamweaverなどの競合製品よりも低価格だ。ただし、開発者はExpression WebがMSDNのどのサブスクリプションにも含まれていない点に留意する必要がある。

 MSDN Universalは当初、MicrosoftのすべてのOS、サーバ製品、開発者ツール、Officeパッケージに至る各種の製品のテスト版を含み、プロフェッショナルな開発者がMicrosoftプラットフォーム用のソリューションを構築する際に必要となるすべての要素が揃うことから、開発者にとっては「ワンストップショッピング」が可能なサブスクリプションとされていた。

 Microsoftは2005年、MSDNプログラムに変更を加え、MSDN Universalの名称をMSDN Premiumに変更したほか、Visual Studio Team Systemのサーバコンポーネントなど、一部の開発者向け製品についてはMSDNに含まれないため、別個に購入する必要が生じる、と発表した。

 Visual Studioの将来版では標準への準拠が強化されることになるだろうが、それまでは、標準準拠のWebオーサリングツールを必要とする設計者や開発者は、既にMSDNのサブスクリプションを購入済みであっても、別途、Expression Webを購入しなければならない。

Expressionファミリーのそのほかのツール

 Expression Webは、プロフェッショナルなWebサイト設計者向けの製品ファミリーとしてリリースが予定されている一連の製品の第1弾となる。Expressionファミリーのそのほかの製品は現在、プレビュー版が提供されている段階で、製品版のリリースは2007年第2四半期に予定されている。

Expression Blend Windows Presentation Foundation(WPF)を使ったユーザーインタフェースやアニメーションを構築できる。AdobeのFlash技術を土台としたツールと競合する。推定小売価格は499ドル。

Expression Media グラフィックス、サウンド、ビデオなどのファイルの目録を作成、分類したり、ビデオファイルをWPFがサポートするフォーマットに変換したりするためのツール。Microsoftが2006年6月に買収したiView MediaProを土台とした製品で、推定小売価格は299ドルとなる。今現在はiView MediaProが提供されており、ユーザーはExpression Mediaがリリースされた時点で無料でアップグレードできる。

Expression Design XAMLをベースとしたイラストレーション/グラフィックス設計ツール。XAMLは、WPFの中核となるXMLベースのフォーマットだ。Expression Designでは、ピクセルベースとベクトルベースのグラフィックスプログラムの要素を統合できる。Microsoftはこの製品を、PhotoshopやIllustratorなどのツールを補完する存在として位置付けている。

 さらに、MicrosoftはすべてのExpressionツールをバンドルした「Expression Studio」を599ドルでリリースする計画だ。Expression DesignはExpression Studioパッケージでのみ提供され、単体では販売されない。

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