すべてはモバイルユビキタスを創造するために――日本通信企業力を高めるモバイルソリューション(1/2 ページ)

国内初のMVNO(仮想移動体通信事業者)として、キャリアには見られないような特色あるデータ通信サービスを展開する日本通信。最近ではセキュリティなど事業領域を拡大させている。第4回は、法人市場へのアプローチについて田島淳執行役員に聞いた。

» 2007年04月05日 07時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 国内初の仮想移動体通信事業者(MVNO)として、公衆無線LANとPHSデータを相互に利用できるサービスや、150時間使い切りプランといった特色のある通信サービスを展開する日本通信。2007年は、セキュリティサービスにも注力し、モバイル以外にも事業領域を広げつつある。同社の田島淳執行役員に、エンタープライズ市場への取り組みを聞いた。

ITmedia 日本通信のモバイル事業にはどのような特色がありますか?

田島 当社は、MVNOやデータ通信会社だと思われることが多いのですが、実はこれらのサービスだけを提供しているわけではありません。当社が目指すものは、「ユビキタス」サービスの実現です。ワイヤレスという手段を使って、便利なアプリケーションを自由自在に使うことができる環境を提供したいと考えています。当社の通信サービスは、いわば「通信電池」というものです。

田島淳執行役員

 普段の生活では、水道の蛇口を捻れば水が出ます。ユーザーは、水道を特別に意識することなく当たり前のように利用しています。しかし、通信は少しの時間だけ通話をしても「料金はいくらだろう」――と、電気や水道に比べて何かと意識してしまいますね。

 通信電池とは、例えばお店で必要な分だけの通信を買うというようなイメージです。普段利用するアプリケーションの中に通信が入っていて、ユーザーが特に意識することなく通信を使っているような世界を提供したい。そのようなユビキタス通信を実現するために、MVNOやセキュリティといった、さまざまなビジネスを関係させながら展開しています。

ITmedia 法人市場でのビジネス展開はいかがでしょうか?

田島 2001年に法人向けのデータ通信サービスを始め、これまでにウイルス対策やデータ保護の「SecurePB」、データ圧縮による通信コストの削減など、データ通信に求められる多くのサービスを開発してきました。

 第三世代携帯電話(3G)による高速データ通信サービスに関心が高まっていますが、PHSの人気も依然として根強くあります。当社のユーザー数を見ても、最近はPHSの利用が順調に拡大しています。3Gに比べて、やはり通信コストの安さや安定した通信品質をユーザーが見直しつつあるようですね。もちろん3Gサービスへの期待も強いので、当社も携帯電話各社に接続をお願いしています。2007年内には、PHSと3Gでデータ通信ができるサービス(Doccica)を始められる見込みです。

 MVNOの良いところは、ユーザーの求めるサービスを自由にハンドリングできる点にあります。サービスエリアやコストを求めるならPHS、通信速度なら3Gというように、ニーズや利用状況に合わせて使い分けができます。

ITmedia セキュリティなど、モバイル以外の領域にも積極的にビジネスを展開されていますね?

田島 例えば1月に発表した「CentraPolicy」(関連記事)は、モバイルや固定など利用環境に応じて利用できるセキュリティプラットフォーム製品です。当社は固定の通信サービスを行っていませんが、ユーザーはモバイルも固定網も利用します。この製品は、モバイルの通信環境を起点に固定通信のセキュリティも確保するというコンセプトで開発を行いました。

 3月にはメールのフィルタリング/アーカイブ/暗号化サービスで米Postiniと、企業向けVPN接続サービスについてグローバルソリューションズと、それぞれ提携しました(関連記事)。Postiniとの提携はアプリケーションの領域、グローバルソリューションズとの提携は通信の領域に当たります。まず通信のプラットフォームがあり、その上にセキュリティのプラットフォームがある。そしてアプリケーションが載るというイメージです。当社では各レイヤーで個別のサービスを展開するより、一体化したサービスとして提供したいと考えています。

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