ウィルコムのフォーラムで技術担当の近副社長がPHSサービスの将来について語った。目指すは「PHS beyond 3G」だ。
ウィルコムの近義起執行役員副社長は4月12日、同社フォーラムでPHSの高度化と次世代サービスについて講演を行った。第3世代携帯電話サービス(3G)に匹敵する高速通信化に向けた取り組みを紹介した。
同社では、次世代PHSサービスの展開に向けて、現在「W-OAM」と呼ばれる高度化規格のエリア拡大と基幹ネットワークのIP化を推進中だ。W-OAMは、電波周波数の有効活用に優れた特長を持つ。
これとIP化と組み合わせることにより、1つの基地局で広範囲に高速通信やクリアな通話サービスを提供できる。2007年度中に、最大800kbpsの通信サービスを提供する計画で、都市部を中心にエリア拡大を進める。
携帯電話各社が3Gサービスを拡大させ、メールや音楽だけでなく、映像配信などの大容量サデータを提供するようになった。通信が高速化に伴ってユーザー1人当たりが月間で利用するデータ量は肥大化しつつある。
近副社長は、「固定通信のブロードバンド化で起こったことが当然、無線の世界でも起こりうる。しかし、無線サービス提供者の多くがこの課題に目を向けとしていない」と指摘する。PHSの高速化でも予想される課題になる。
その課題を乗り切る同社の取り組みが、ネットワークのオールIP化。次世代基幹ネットワークのNGNとも関連し、同社では基幹網や基地局間の80パーセントをすでに光化した。今後は、残り部分の光化と端末と基地局間通信のIP化に取り組む。
これらの施策によって、高度化サービスでは実際の利用シーンにおいて3Gと遜色のないサービスを提供できるという。PHSはマイクロセル方式という、きめの細かい基地局設置を行っており、1台の端末を複数の基地局でサポートできる。「F1カー(3G)は渋滞した場所でスピードを出せないが、PHSはいろいろな道を高速で走れるイメージだ」(近副社長)。
20Mbps以上の通信速度を目指す次世代PHSは、正式な規格化はまだなものの、同社ではすでに国内各所でメーカーと実証化実験を進めている。また、現行のPHSも3月のITU-R勧告によって、次世代無線通信サービスの推奨規格に認められた。
近副社長は、オールIP化によってキャリアが垂直統合型で提供する国内の無線通信サービスが、コンピュータの世界と同様の水平分業型のビジネスに激変する可能性があると話す。こうしたサービス環境の変化も視野に入れながら、同社は次世代PHSの準備を進めている。
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