食の安全はモバイルから、ICタグとPHSを活用したトレーサビリティ

4月12〜13日のウィルコムフォーラムで来場者の関心を集めた、ICタグとPHSを活用した大日本印刷の食品トレーサビリティを紹介しよう。

» 2007年04月16日 08時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 BSEや鳥インフルエンザ、一部メーカーの品質管理の不徹底など食に対する消費者の不安が広まっている。食品業界ではリスク管理や原因究明を早期に行える体制作りが早急な課題だ。そこでトレーサビリティシステムの利用に関心が高まっている。

説明を行う大日本印刷の松林氏

 大日本印刷(DNP)ICタグ本部の松林賢悟氏は、トレーサビリティシステムを導入するメリットについて、1)安全性の向上、2)情報の信頼性向上、3)業務効率化――を掲げる。「消費者の不安を早期に解消する情報活用が求められる」(松林氏)という。

 食品トレーサビリティシステムでの課題は、主に輸送中の荷物の位置管理や品質保証の維持、コストの3点。DNPでは、過去にさまざまな業界に対してWebサービスを提供してきた実績から「Trail Catch」と呼ばれる、リアルタイムの位置情報と荷物の温度情報を管理できるサービスを提供している。

温度と位置情報で食品輸送の安全を管理するTrail CatchのICタグ

 Trail Catchは、温度センサーとPHS通信モジュールを一体化したICタグで、輸送する荷物の情報を10分〜2時間間隔でPHS網を経由してCSCが提供する通信センターに送信する(関連記事)。位置情報は、PHS基地局の情報を利用している。

 管理担当者は、荷物の出荷や現在位置、着荷、位置情報、温度状態をWeb上でログや地図、グラフなどによって確認することができる。輸送中の食品にダメージを与えるような温度異常が発生した場合に、管理者へメールで通知する機能もあるという。

 「管理者は出荷時にWebで食品情報とICタグ情報を入力し、納品書と一緒にICタグを入れれば、自動的に着荷までの情報を管理できる」と松林氏は説明している。バッテリは通常の乾電池で1カ月半ほど連続利用でき、残量が無くなる直前にICタグが通知する。

 今後は、運送ルートの管理機能や温度以外のセンサーの搭載、食品輸送に関わるスタッフが管理情報を共有できる仕組みを提供していくという。また、松林氏は「食の流通はグローバル化も進んでおり、将来的にはICタグを介して取引相手国の言葉でも情報を共有できるようにしたい」と話している。

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