SOA成功の極意は意外なところに――IBM IMPACT 2007

フロリダ州オーランドで「IBM IMPACT 2007」が開幕した。はじめての開催にもかかわらず、数千名の参加者が集まった同イベントでIBMは、SOAによる革新をリードしていくIBMの姿勢をユーザーに印象づけた。

» 2007年05月22日 08時47分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 見渡す限りの青空が広がる米国時間5月21日の朝、フロリダ州オーランドで「IBM IMPACT 2007」が開催された。IBMのソフトウェア部門、とりわけWebSphereの事業部が中心となって開催した同イベントにおいて、WebSphereをはじめとしたIBMのミドルウェアに関するテクノロジー、ソリューションを紹介するというよりは、SOAのさらなる発展を主なテーマとしており、SOAによる革新をリードしていくIBMの姿勢をユーザーに印象づけた。

 基調講演に登場したIBMのソフトウェア事業を統括するスティーブ・ミルズ上級副社長は、「世界が複雑になり、それに伴ってアプリケーションやそのガバナンスも複雑なものとなっている。そこにおいてSOAは大きなインパクトを与えている」と話し、SOAによるガバナンスの重要性やROIの改善をはじめ、SOAが企業にもたらす多様な価値を説いた。

ミルズ上級副社長 好調なソフトウェア事業を率いるミルズ上級副社長の顔には自信がみなぎる

 M&Aなどで企業が合併したものの、ITの統合に数年掛けていては競争力は失われてしまうことが容易に想像できることからも分かるように、市場環境が急激に変化した場合、企業のビジネスやプロセス、それを支える既存のITリソースも柔軟に変化する必要がある。そうした課題に応えるソリューションとして登場したSOAだが、これまでIBMは、設計や実装、運用・保守のフェーズのそれぞれで「WebSphere」「Rational」「Tivoli」といったミドルウェアブランドでSOAのための包括的な基盤を提供してきた。それに後押しされる形で多くの先進的な企業がSOAを導入し、業務を最適化したり、迅速に新規事業へ参入したりするなど、十分な成果を上げている一方で、“ビジネスとITのギャップ”に苦しむ企業はいまだ少なくない。

 今回のIBM IMPACT 2007では、そうしたギャップを埋めていくために、「Business Impact」「Technical Impact」、そして人的な側面からSOAを推進していく「Personal Impact」という3つの視点で語られた。

 製品面では、新たな製品として「Rational Asset Manager」が発表されたほかは、機能拡張の発表がメインとなった。これは、IBMのSOAポートフォリオが円熟期に入ったとみることもでき、信頼性などより顧客の細かいニーズに応えていく姿勢を示しているといえる。

 「Business Impact」の視点からは、かつてWebSphere部門のジェネラルマネジャーを務め、現在はIBM Business Consulting Services and SOAのジェネラルマネジャーであるロバート・レブランク氏が「業界/業種特化型SOAロードマップ」を示した。これは、業務の側面からSOAをマッピングするための青写真となる「ビジネス・ブループリント」と、「WebSphere Business Services Fabric」を使用した再利用可能なソフトウェアモジュール「SOA Industry Frameworks」で構成されるもの。「ビジネス・ブループリント」は、各業界の背景・課題、各業界がSOAに取り組むことで得られるメリットを具体的なビジネスプロセスを作成しながら調査するサービスとなる。これにより、複雑に絡み合うビジネスプロセスを再構築し、その柔軟性や再利用性を高める一助となる。

SOA Industry Frameworks SOA Industry Frameworksとして示されたスライド。医療、保険、銀行、小売り、テレコム、製造業の6業種が対象。2007年後半にはフレームワークnの追加も予定しているという

 また、「Personal Impact」の視点からは、IBMのSOAおよびWebSphere戦略/マーケティング担当バイスプレジデント、サンディ・カーター氏が、ITとビジネスの両面を理解する学際的な思考の必要性も説いた。

 同社が行った調査では、ユーザーの半数以上がSOAの実行を妨げる最大の要素として「SOA技術者のスキル不足」を挙げていると説明。ビジネスを横断的に理解できる水平方向、深い技術知識を必要とする縦方向、両方のスキルを有する「T型」といわれる人材を育成するための施策として、Developerworks内に「SOA Space」と呼ばれるSOAの開発者に向けたSNSの設置や、Webキャスト、ポッドキャスト、デモ、ホワイトペーパーなどで構成されるオンラインポータル「IMPACT TV」、さらに、「Innov8」という名の3D対話型教育シミュレーターを2007年9月をめどに公開予定であることなどを明かした。このうち、Innov8はSecond Lifeに似たインタフェースもさることながら、ゲームを通してSOAを学べるため、SOAの新たな教育法として注目される。

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