とはいえ、そうした運用だけで生産ラインのコストの把握がレベルアップすることはなく、とうとう、監査法人からもシステム改善について示唆されるようになる。製造業においても厳密な内部統制の体制が求められつつある昨今、抜本的な改革が急務となった。
「調べてみると、すべて刷新するのも、現状のシステムにカスタマイズをかけるのもコスト的にはほとんど変らなかった。それならばいっそのことすべてを入れ替えてしまおうということになったのです」(宮崎氏) 06年2月からカイジョーに適したパッケージを調査し、6社の製品をリストアップした。会計システムのサポート切れが迫っていることもあり、システム完成および稼働は同年10月と経営層は決定した。そうなると当然スクラッチ開発などをしている時間はない。しかしパッケージ導入においても同社の業務に合わせたカスタマイズは当然発生する。
「プロジェクトには生産、販売、企画、技術、会計の各部門から10名から20名ほどのスタッフに集まってもらいワークチームを編成しました。カスタマイズが必要な部分と、業務を改善してパッケージの機能に合わせる部分を切り出すためです」と語るのは情報システムグループ、チームリーダーの石井岩男氏。システム開発に参加しながら、自分たちの業務を改めて見直すことができたというわけだ。
選定されたパッケージはグロービアインターナショナルのglovia.com。各ベンダーに対しては業務要件をRFPに記載して提出していたが、業務に対する親和性や内部統制機能がすでに搭載されていることなどが選定の基準になったという。
06年4月から各ワークチームを擁したプロジェクトが動きだした。
システム設計は6月、アドオンは7月から開始された。このプロジェクトにはベンダーの紐づかないコンサルティング会社にも協力を仰ぎ、スケジュール進捗などに力を発揮してもらったという。
「原価情報はglovia.comの情報を元にDWHで集計・生成することになりました。製品、部品の在庫情報を把握できるようになり、コスト意識も今まで以上に高まっています。今後はこうした情報を現場の仕事に活かして、経営サイドにも役立つ情報として提供していきたいと思います」と語るのは情報システムグループの吉沼聡氏。
会計システムの再構築も含めて6カ月でERPシステムを構築したというスピードに目を奪われがちだが、多くの意見を吸い上げながらムダを省く作業を進めたことこそ、同社の情報システム部門が上げた第一の成果といえるのではないだろうか。
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