ビル・ゲイツ氏、「創造的資本主義」を唱える

Microsoftのビル・ゲイツ氏が、かつて中退した母校ハーバード大学の卒業式で講演。世界の不公正を正すよう卒業生に訴えた。

» 2007年06月08日 11時58分 公開
[John Hazard,eWEEK]
eWEEK

 Microsoft創設者で、世界一の富豪ビル・ゲイツ氏は6月7日、米ハーバード大学の卒業生に、新しい「創造的資本主義」について語り、政府と企業が正しいことをしたくなるような報酬と利益の概念を築くよう奨励した。

 ゲイツ氏は同校の第356回卒業式での講演で世界の不公正に焦点を当て、企業リーダーと政府が、われわれが利用できる発見とテクノロジーの恩恵を、それが届かない人や場所に与えるよう促す新しい方法を見つけるよう生徒らに呼びかけた。

 「もっと創造的な資本主義を開拓できれば――市場の力が及ぶ範囲を拡大し、もっと多くの人々が利益を得る、あるいは少なくとも生計を立てられるようにして、最悪の不公正に苦しんでいる人々の役に立てれば――もっと貧しい人々に利するように市場を動かせる」(同氏)

 同氏はまた、われわれは世界中の政府に、納税者の価値をもっと反映した形で税金を使うよう圧力をかけられる、とも語った。

 「企業にとっては利益、政治家にとっては得票という形で貧しい人々のニーズに応えるアプローチを見つけられれば、世界の不公正を減らせる持続可能な方法を見つけたことになる。この仕事に終わりはない。終えられない。だが、自覚を持ってこの課題に答えようとする努力が世界を変える」(同氏)

 ゲイツ氏はまた、新興市場や設備の不十分な地域へのグローバル情報ネットワークの拡大は、人類の革新と発見への要求を支えるための責務だと宣言した。

 「このネットワークの魔法のようなところは、同じ問題に一緒に取り組める優秀な人材の数を劇的に増やすことだ。だが世界では、この技術を利用している人1人に対し、利用していない人が5人いる。つまり、多くのクリエイティブな頭脳がこの議論から取り残されているということだ――実用的な知性と関連する経験を持ちながら、性能を磨いたり、アイデアを世界に提供するためのテクノロジーを持たない優秀な人々が」(同氏)

 ゲイツ氏は来年Microsoft会長の座から退き、慈善団体Bill and Melinda Gates Foundationの運営に力を入れる。同氏はソフトウェアの第一人者としての人生の後は、開発途上国の生活の質を高めることを優先課題としてきた。

 元米大統領ビル・クリントン氏は6日に、ユーモアや風刺に満ちた講演が行われるハーバード大学のイベントHarvard Class Dayで卒業生に向けて語った。同氏は人の絆と、人々、国家、政治の連携に焦点を当てるよう学生に促した。

 ゲイツ氏は、1975年にクラスメートのポール・アレン氏とともにMicrosoft設立に専念するためハーバード大学を中退してから31年後、ついに同校の学位――名誉法学博士――を得た。

 同氏は、慈善団体での新たな仕事とMicrosoftからの引退を引き合いに出し、同校での短い在学期間をネタに冗談を言った。

 「わたしは来年転職する。素晴らしいことに、やっと履歴書に大学の学位を書ける。ここにいる卒業生の皆さんが、学位へわたしよりも直接的なルートを取ったことを賞賛する」(同氏)

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