経済企画協会の「ESPフォーキャスト調査」(5月調査)によると、日銀の次回の引上げ(第3次利上げ)の時期について無回答を除く33名のエコノミストの予測は、6月が1名、8月が8名、9月が9名、10月が9名、11月が6名となっている。参議院議員選挙の選挙期間中に当たる見通しの7月を排除して回答しているようである。
選挙と金融政策の関係を過去のデータで確認しておく。現憲法下で、全国規模の衆参国政選挙期間の金融政策の変更についてみると、衆議院選挙中には変更は実施されていない。参議院選挙期間中では1965年6月26日の公定歩合引き下げ、95年7月7日の無担保コールレート・オーバーナイト物の誘導目標水準引き下げと、政策金利の引下げは2度あったが、景気にマイナスになる利上げは例がない。投票日直前の利上げは選挙結果に影響を及ぼすとの懸念から、日銀が政治的に配慮していた可能性があるのかもしれない。
しかし、98年4月の新日本銀行法施行に伴い、日銀の独立性はより確かなものになった。政治日程と金融政策は関係ないというのが現在の日銀の見解だ。7月の可能性はないわけではないのだろうが、まだ7月の時点では経済・物価状況が第3次利上げを実施できるタイミングではないだろう。9月頃になると、日銀の利上げができる環境が整う可能性はかなり大きいのではないかと考える。
(「月刊アイティセレクト」2007年8月号の「景気探検 第64回 時代を読む」より)
たくもり・あきよし
「景気ウォッチャー調査研究会」委員。過去に「動向把握早期化委員会」委員、「景気動向指数の改善に関する調査研究会」委員などを歴任。著書は「ジンクスで読む日本経済」(東洋経済新報社)など。
- ホームレスの実態から見る景気の回復具合は?
厚生省が集計した「ホームレスの実態に関する全国調査」によると、全国のホームレスは今年1月時点で1万8564人だった。この調査から見えてくる景気の動向とは?
- 「ハケンの品格」で占う――強い女性ドラマがヒットすると景気は?
IT関連の在庫調整や米国経済の減速の影響で製造業中心にもたつき感はあるが、個人消費の推移などから、景気の底堅さを示唆するものも多い。身近なデータからも景気の流れを追ってみよう。
- 経営者よ、管理者よ、「針のむしろ」に座ってみませんか?
キャリアも積み、役職が上がってきた人ほど「改めて学ぶ」ということが大切だ。勉強というのはいつになっても苦行が伴う。しかし苦しい分、得るものも大きい。
- 需要はあってもまだ利用できないオープンソースの選挙システム
有権者が選挙投票のためのオープンソースシステムを利用する気になっても、オープンソースの選挙投票向けソフトウェアおよびシステムをすぐに供給できるベンダーは存在しない。信頼に足る電子投票の実現に向けた鍵は何かを考える。
- 情報通信法はブロガーを直撃する
延長国会で日程がズレた参院選。社保庁問題などが長期化する中、ブロガーはどう反応しているのか。そして新たに策定されようとしている情報通信法は――オルタナティブ・ブログでは、IT関連の時事ネタが独自解釈で発信される。
- 本来なら日本で生まれるべきもの!?
デバイスやサーバービジネスの需要増大以外にも、「セカンドライフ」が日本のデジタル産業の今後に大きな影響を及ぼす。だからといって、喜んでいるだけでは悲しい。ウェブを超える仮想世界の誕生地は、「日本」であってほしかった――。
- ハッカーはものを作り、政府は指針を作る?
総務省が中心となって取りまとめ、この7月に施行される「情報システムに係る政府調達の基本指針」によって、官公庁のOSS導入に弾みがつくだろうか。オープンソース産業ではなくソフトウェア産業全体というトーンで語られるとき、一抹の不安がよぎる。
- 金利から読み解ける地方財政の実情
自治体が資金調達を目的に発行する「地方債」は、市場からの資金を募るタイプが主流になりつつある。最近では市場原理が適用されたことで、自治体ごとの差が明確に可視化されつつある。
- 15年ぶりのチャンスを生かせ
中堅・中小企業を取り巻く環境が好転している。日本のものづくりを支えてきた工作機械業界は2005年12月には単月ベースで過去最高の受注額を記録。バブル期の以来の長期低迷を脱した。今こそ、IT化のチャンスである。
- 金融機関との協調による経営再建
大幅な債務超過に陥ってしまったある事業者。取引のある金融機関からは抜本的な経営再建計画を求められているが……。リレーションシップバンキングなど地元金融機関の融資体制と併せて対応を考える。
Copyright© 2010 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.