Ottawa Linux Symposium――第1日(1/3 ページ)

Linuxの最新動向が知りたい方にとって、Ottawa Linux Symposiumは絶好の機会である。先日開催された第9回Ottawa Linux Symposiumの様子をお届けしよう。

» 2007年07月05日 13時27分 公開
[David-Graham,Open Tech Press]
SourceForge.JP Magazine

 第9回Ottawa Linux Symposium(OLS)の初日は、Linux Weekly Newsのジョナサン・コルベ氏による今や恒例となったLinux Kernel Reportで始まり、来るべき自社製品のハードウェアプロトタイプを展示したIntel主催のレセプションで終わった。

Kernel Report

 開幕基調講演は、Linuxが誕生した1991年以来のカーネル・リリース・サイクルを示しつつLinuxの歴史をごく簡単に振り返ることから始まった。コルベ氏によると、カーネルの重要なリリースは当初2年に1回の割合だったが、ここ数年は2カ月に1回と高頻度化した。毎回がメジャーリリースになり、今ではリリースのたびに新しい機能が加わりAPIが変わるという。

 現在のリリースサイクルはきわめて予測しやすく、2.6.22は7月、2.6.23は10月ごろといった具合だとコルベ氏は言う。各サイクルは、最初のリリース候補、例えばカーネル2.6.22-rc1を出し、次に2番目のリリース候補を出し、必要ならさらに3番目のリリース候補を出しと、安定するまでリリース候補を出し続ける。そして、リリース候補が安定すると、次のカーネルの作業が始まる。

 各カーネル・リリース・サイクルの最初の2週間はコードを組み込む期間で、この間に機能や変更を加えて-rc1(リリース候補第1版)を作り上げる。その後、8〜12週間かけて新機能を含むカーネルを安定させ、新しい安定バージョンのリリースでサイクルが終わる。

 このリリース・サイクル・システムは2.6.12の際に導入され、数回のリリースを経てカーネル開発コミュニティーの原則として確立されたとコルベ氏は説明し、その裏付けとしてカーネルの中で変更された個所の累積行数の推移を示した。バージョン番号が付されたこのグラフを見れば、直線的に変化していた行数が階段状に変化するようになったことが明瞭に読み取れる。

 報告では、2006年6月のカーネル2.6.17以来、2100名の開発者が3万100のチェンジセットにかかわり200万行におよぶカーネルコードを変更したという。

 コルベ氏によると、このリリース方法になってから変更が利用者に届くまでの期間が短くなった。かつては新しい機能が安定カーネルに組み込まれるまで2〜3年かかっていたが、今では数か月で登場する。これはまた、Linuxディストリビューションがメインラインカーネルの近くにいられるということでもある。以前のカーネル開発モデルで運用されていたころは、メインラインカーネルに2000ものパッチを当てたディストリビューションさえあった。リリースサイクルの短期化により、ディストリビューションにとって、メインラインカーネルから離れざるを得ない重大な理由はもはやないという。

 しかし、今のリリース方法とて完全ではない。コルベ氏は、問題のある分野として、バグの追跡、改修による副作用のチェック、文書化、改修の困難なバグを挙げた。改修が困難なバグというのは、満月の夜に特定のハードウェアが特定の状態になったときにしか解決できないといった類のバグのことだ。その結果、既知のバグを抱えたままカーネルがリリースされているという。

 こうしたバグには、どのように対処すべきだろうか。コルベ氏は、バグ追跡の改善、安定化(デバッグ)専用カーネルリリース、自動テストなど、多くの戦略を挙げ、カーネルは概して良くなっていると話した。

 続いて、コルベ氏は、私見だと断った上で、今後のカーネルを次のように予測した。まず、間もなくリリースされる2.6.22カーネルについては、mac80211ワイヤレススタック、UBIフラッシュ対応ボリューム管理、IVTVビデオ・チューナー・ドライバー、新しいCFQ/IOスタック、新しいFireWireスタック、eventfd()システムコール、SLUBアロケーターが搭載されるだろうと述べた。

 スケーラビリティーの将来については、次のように予測した。現在のスーパーコンピュータはあしたのノートPCだ。Linuxでは、512台のプロセッサのサポートは順調だが、4096台になるとまだ問題が残っている。携帯電話機など、下位方向へのスケーラビリティーは、上位方向に比べ、あまりよく対応できていないという。

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